[平成19年健康保険改正]標準報酬月額の上下限の変更に伴う月額変更の特例

 平成19年4月からの健康保険法改正の内容については、以前より当ブログで取り上げてきました。法律も施行され、実務的な質問がたくさん出てきていますが、そんな中から今回は処理に漏れが発生しやすい月額変更の特例について取り上げてみましょう。



[質問]

 当社では、経営状況の変化に伴い、役員報酬を昨年(平成18年)10月に150万円から100万円に減額しました。今回、社会保険事務所から「健康保険 厚生年金保険 標準報酬月額改定通知書」が届き、改定後の標準報酬月額が「1210千円」となっていました。現在の役員報酬の100万円と比較をすると、標準報酬月額がかけ離れています。このまま変更すればいいのでしょうか?参考までに役員報酬の支払い状況を書いておきます。
 平成18年 4月~9月 150万円
 平成18年10月~ 100万円


[回答]

 今回のケースは健康保険法改正に伴う月額変更の特例に該当するため、月額変更届を提出し、平成19年4月より標準報酬月額の随時改定を行うことができます。平成19年1月以前に固定的賃金に変動がありながら、従来の標準報酬月額では2等級以上の差が生じない等のため、届いた改定通知書と現状の報酬がかけ離れてしまった状態を回避するためにこの特例が設けられています。ご質問のケースで考えてみましょう。


平成18年
 4月 150万円
 5月 150万円
 6月 150万円
 7月 150万円 :A
 8月 150万円
 9月 150万円
10月 100万円 :B1
11月 100万円
12月 100万円
平成19年
 1月 100万円 :B2
 2月 100万円
 3月 100万円
 4月 100万円 :C、D


(A)定時決定
 平成18年4月から7月の報酬平均 150万円により、平成18年9月からの標準報酬月額 980千円で決定
(B)役員報酬減額・随時改定確認
 平成18年10月から12月の報酬平均 100万円となり、随時改定に該当しない
(C)改定通知書に基づく月額変更
 定時決定時に提出した算定基礎届により標準報酬月額 1210千円に改定
(D)随時改定の特例処理
 平成18年10月から12月の報酬平均 100万円となり、新標準月額表に当てはめ、標準報酬月額 980千円で決定


 これは下記の全ての要件に該当する被保険者に対し、月額変更届を提出することにより、特例的に平成19年4月に標準報酬月額の随時改定を行うことができるというものです。
平成19年3月の標準報酬月額が98,000円または980,000円の被保険者。
平成19年3月の標準報酬月額の算定の基礎として届出(直近の算定基礎届、月額変更届等)の報酬が支払われた期間の初月の翌月から平成19年1月までに支払われた賃金に、固定的賃金の増額または減額があった。(ただし、平成19年4月随時改定該当者は除く。)
平成19年3月の標準報酬月額の算定の基礎となった報酬月額と、平成19年1月から3月までの3か月に支払われた報酬を算定の基礎とした報酬月額を、それぞれ新しい等級表に当てはめて得た標準報酬月額の間に2等級以上の差がある。


 なお、この特例に対する届出は備考欄に「特例」と記載しなければなりません。


[まとめ]
 今回の特例に該当者は非常に限定的だと思いますが、改定通知書と現在の給与額を比較し、届出漏れがないように注意してください。



関連blog記事
2007年4月10日「[平成19年健康保険改正]標準賞与額の上限額改正に伴う賞与支給時の健康保険料に関する注意点」
https://roumu.com
/archives/50940442.html

2007年3月31日「[平成19年健康保険法改正]1月に昇給があった場合の月額変更」
https://roumu.com
/archives/50931028.html

2007年3月29日「[平成19年健康保険法改正]標準報酬月額の上下限の変更に伴う届出は不要」
https://roumu.com
/archives/50929303.html


参考リンク
愛知社会保険事務局「社会保険あいち4月号[pdf]」
http://www.sia.go.jp/~aichi/kouhousi/s1904.pdf
社会保険庁「 政府管掌健康保険と厚生年金保険の保険料額表」
http://www.sia.go.jp/seido/iryo/iryo16.htm


(宮武貴美)


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