賞与計算における社会保険料取扱い注意事項2 健康保険標準賞与額累計申出書
今回は、賞与計算における社会保険料取扱い注意事項の2回目として、「健康保険標準賞与額累計申出書」(以下、「申出書」という)作成について取り上げましょう。これは転職者等に年度累計で540万円を超える賞与が支払われた際に提出が必要となる書類です。
標準賞与額の累計額は、年度内において被保険者資格の取得・喪失を行った場合でも保険者単位で通算して求めることになっています。このため、転職等により年度内に同一保険者において複数の被保険者期間が存在し、累計賞与額が540万円を超えたことが分かった場合は、被保険者が事業主を経由して管轄の社会保険事務所に申出書を提出する必要があります。提出にあたっては以下のような事項に注意してください。
累計期間
累計期間は当年4月1日から翌年3月31日の1年間であり、この期間に累計540万円を超える賞与が支給された場合に提出する。
累計対象保険者
同一保険者単位での累計となる。よって健康保険組合の会社から政府管掌健康保険加入の会社への転職等の場合には保険者が異なるため、通算の対象外となる。A社会保険事務所からB社会保険事務所への管轄変更については、あくまでも政府管掌健康保険という同一保険者として扱われる。
累計賞与の対象
資格喪失日が属する月に支給される賞与は原則として保険料の賦課対象外であるが、標準賞与額の累計計算には合算される。
なおこの取扱いは、被保険者からの申出により手続を進めることが前提となっています。しかし、この制度を理解し、被保険者自らの申出を期待することは現実的に困難であると想像します。また、会社側が前職分の賞与額まで把握し、気付くことも難しいと言えるでしょう。とはいえ、標準賞与額の訂正および保険料の還付または充当は申出書の提出に基づき行われることを考えると、不要な保険料の納付がないよう、確実な提出が求められます。
関連blog記事
2007年6月11日「賞与計算における社会保険料取扱い注意事項1 標準賞与額変更・支給月喪失者の取り扱いなど」
https://roumu.com
/archives/50989861.html
2007年4月10日「[平成19年健康保険改正]標準賞与額の上限額改正に伴う賞与支給時の健康保険料に関する注意点」
https://roumu.com
/archives/50940442.html
2006年10月4日「健康保険法改正その6「標準賞与額の上限変更」」
https://roumu.com
/archives/50747124.html
参考リンク
社会保険庁「政府管掌健康保険における標準賞与額の取扱いについて」
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1004_2.htm
千葉社会保険事務局「健康保険標準賞与額の上限の改正について」
http://www.sia.go.jp/~chiba/kennposyouyonojyiugenngaiseinituite.html
愛知社会保険事務局「社会保険あいち3月号」
http://www.sia.go.jp/~aichi/kouhousi/s1903.pdf
社会保険庁「医療保険制度が改正されました」
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n1004.html#19year
(宮武貴美)
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