社員に食事を支給する際の課税判断の注意点

 前回、意外に落とし穴だと思われる事項として解雇予告にかかる税務上取扱いを取り上げましたが、今回も給与計算実務を行う中でミスをしやすい税務上取扱いについてお話したいと思います。社員食堂やお弁当など、会社が社員に食事を支給する際には非課税枠が設けられていますが、消費税分を勘案するなどの運用上のポイントがあります。以下でその具体的対応について解説します。



[質問]
 当社は社員の昼食に仕出し弁当を発注しています。1食あたり税込400円で、希望者は前日の終業時刻までに申請をあげることになっています。費用は会社側が半分負担しており、各人の1ヶ月の申請数を取りまとめ、給与計算の際に本人負担分を控除しています。先日、食事の支給について非課税となるケースがあると聞いたのですが、詳しく教えていただけませんか。


[回答]
 会社が支給する食事については、社員がその食事の価額の半額以上を負担すれば、原則として非課税とされます。ただし、会社が負担する価額が月額3,500円を超えるときは、その額が給与所得として課税されます。この3,500円の計算方法は消費税を勘案して考えることができ、会社が負担した価額に105分の100を乗じた金額によって判断します。


 ご質問の事例では、仕出し弁当は昼食として支給しており、本人が半額負担をしているため、1ヶ月の申請回数が18食以下の場合は課税されません。
■例■
 17食: 3,400円÷105×100
       → 3,238.09・・円 → 非課税
 18食: 3,600円÷105×100
       → 3,428.57・・円 → 非課税
 19食: 3,800円÷105×100
       → 3,619.04・・円 → 会社負担分全額課税(3,800円)


 給与計算においては、支給項目で会社負担分を記載し、控除項目で価額の全額を記載することで本人負担分を徴収する方法が考えられます。記載の際に申請回数によって課税支給額に算入するか否かを判断する必要があります。


[まとめ]
 食事の支給については以前から非課税が認められていましたが、105分の100を乗じた金額という消費税については、対応されていない会社もあるようですので、食事の支給を行なっている会社は一度、見直されることをお勧めいたします。


[参考条文]
所得税基本通達 36-38の2(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)
 使用者が役員又は使用人に対して支給した食事(36-24の食事を除く。)につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。(昭50直法6-4、直所3-8追加、昭59直法6-4、直所3-7改正)



関連blog記事
2007年6月26日「解雇予告手当の税務上の取扱い」
https://roumu.com
/archives/51005404.html

2007年6月19日「賞与計算では育児休業取得者の所得税に注意が必要です!」
https://roumu.com
/archives/50997762.html


参考リンク
国税庁タックスアンサー「食事を支給したとき」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/2594.htm
国税庁「給与所得の源泉徴収事務」
http://www.nta.go.jp/category/pamph/gensen/5151/02/01.htm


(宮武貴美)


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