育児休業中の社員を臨時勤務をさせる場合の育児休業給付の支給調整

 雇用保険の育児休業給付については、雇用保険法が平成19年10月に改正されることもあり、これまで数回、当ブログのテーマとして取り上げてきました。本日もこの育児休業給付に関して実際にお客様から頂いた質問の中から、育児休業中の社員に臨時で働いてもらった場合の育児休業給付の支給調整について取り上げましょう。



[質問]
 当社では、経理課の社員が育児休業を取得しています。本来であれば育児休業中は勤務は行わないのですが、今回、決算処理の都合上、どうしても2日間だけ臨時出勤をしてもらわなければならない状態になっています。本人は了承をしてくれているのですが、この出勤により給与として20,000円程度を支給することになるため、育児休業給付に影響が出るのではないかと心配しています。やはり給与が支給されると調整されてしまうのでしょうか?


[回答]
 今回のケースでは20,000円程度の給与とのことでしたので調整が行われる可能性は低いでしょう。育児休業基本給付金の支給対象期間中に賃金支払がある場合は、その賃金額が休業開始時賃金月額の一定割合を超えてしまうと、その支給額が調整(もしくは不支給)されます。
a.賃金が、休業開始時の賃金月額の50%以下の場合
  賃金月額の30%相当額を支給
b.賃金が、休業開始時の賃金月額の50%超80%以下の場合
  賃金月額の80%相当額と賃金の差額を支給
c.賃金が、休業開始時の賃金月額の80%超の場合
  支給されない


 なお、育児休業基本給付金の支給対象となる休業には、支給単位期間において就業する日が10日以下である場合を指すため、臨時出勤日数が多い場合には、そもそも育児休業として認められないため注意が必要です。


[まとめ]
 育児休業中に出勤を要請することは好ましいことではありませんが、やむを得ず要請しなければならない場合には、このような育児休業取得者が受けられる給付に配慮する必要があります。更に、臨時的な出勤を想定した育児休業規程の見直し、給与の計算方法等、会社として一定のルールを定めておく方が良いかも知れません。


[関連条文]
雇用保険法 第61条の4 第5項(育児休業基本給付金)
5 前項の規定にかかわらず、第1項に規定する休業をした被保険者に当該被保険者を雇用している事業主から支給単位期間に賃金が支払われた場合において、当該賃金の額に当該支給単位期間における育児休業基本給付金の額を加えて得た額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の100分の80に相当する額以上であるときは、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の100分の80に相当する額から当該賃金の額を減じて得た額を、当該支給単位期間における育児休業基本給付金の額とする。この場合において、当該賃金の額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の100分の80に相当する額以上であるときは、同項の規定にかかわらず、当該賃金が支払われた支給単位期間については、育児休業基本給付金は、支給しない。


雇用保険法施行規則 第101条の11
 育児休業基本給付金は、被保険者(高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款及び次款において同じ。)が、次の各号のいずれにも該当する休業(法第61条の4第3項 に規定する支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。
1  被保険者がその事業主に申し出ることによつてすること。
2  前号の申出(以下「育児休業の申出」という。)は、その期間中は休業をすることとする一の期間について、その初日及び末日(次号において「休業終了予定日」という。)とする日を明らかにしてすること。
3  次のいずれかに該当することとなつた日後の休業でないこと。
イ 休業終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の被保険者が育児休業の申出に係る子を養育しないこととなつた事由として公共職業安定所長が認める事由が生じたこと。
ロ 休業終了予定日とされた日の前日までに、育児休業の申出に係る子が一歳(次条各号のいずれかに該当する場合にあつては、一歳六か月)に達したこと。
ハ 休業終了予定日とされた日までに、育児休業の申出をした被保険者について労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 若しくは第二項 の規定により休業する期間(次項及び第百一条の十六において「産前産後休業期間」という。)、法第六十一条の七第一項 に規定する休業をする期間(次項において「介護休業期間」という。)又は新たな一歳に満たない子を養育するための休業をする期間(次項において「新たな育児休業期間」という。)が始まつたこと(特別の事情が生じたときを除く。)。
4  労働契約の期間、期間の定めのある労働契約の更新の見込み、被保険者がその事業主に引き続き雇用された期間等からみて、休業終了後の雇用の継続が予定されていると認められるものであること。



関連blog記事
2007年7月18日「[雇用保険法改正]育児休業給付を受給した場合の基本手当との調整」
https://roumu.com
/archives/51022618.html

2007年6月13日「雇用保険法改正 育児休業給付率の50%への引き上げの内容」
https://roumu.com
/archives/50990000.html

2007年5月14日「[平成19年雇用保険改正]育児休業給付の給付率引き上げ」
https://roumu.com
/archives/50969725.html


参考リンク
ハローワーク「育児休業給付」
http://www.hellowork.go.jp/html/info_1_h3d.html#b-1
千葉労働局「育児休業給付について」
http://www.chiba-roudoukyoku.go.jp/seido/antei/antei07.html


(宮武貴美)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。