雇用保険 高年齢雇用継続基本給付金の支給決定と制度の今後

 平成18年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法。ほとんどの企業が継続雇用制度導入で対応していると思いますが、継続雇用を進める中で比較的有効な制度として利用されているのが雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金です。今回は、この制度で資格を確認したところ否認された事例を取り上げてみたいと思います。



[質問]
 当社では定年を60歳と定め、その後は希望者全員を継続雇用しています。ただし、給与面に関しては原則70%に減額し、雇用保険の高年齢雇用継続給付の給付を受けています。今回、資格の確認をしたところ、否認されてしまいました。この社員は、56歳のとき転職をしてきたのですが、前職でも雇用保険に加入していたはずです。どうして否認されたのでしょうか?またそもそも、この継続給付がいつまで続くのか不安視しています。何らかの方向性が出ていれば教えてください。


[回答]
 高年齢雇用継続基本給付金の支給対象者となるには以下の2点を満たす必要があります。
雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者
原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける


 今回のご質問では、56歳で転職されたとのことですが、被保険者であった期間が5年に満たないために否認された可能性が高いといえるでしょう。前職からの被保険者期間通算は、前職の離職した日の翌日から起算して1年後の応答日までに再就職し、基本手当(再就職手当、傷病手当金を含む)または、特例一時金の支給を受けていない場合に限るため、必ずしも通算ができるとは限りません。


 またご質問の制度の今後についてですが、平成19年1月9日に厚生労働省から発表された「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」を見ると、「高年齢雇用継続給付は、原則として平成24年度までの措置とし、激変を避ける観点から、その後段階的に廃止すべきもの」とされています。よって平成25年度から制度の見直し・廃止が行われる予定となっているようです。


[まとめ]
 一旦否認された場合でも、その後、被保険者であった期間が5年以上となたときには、受給資格が生じます。この場合には、60歳時点の賃金を受給資格発生時の賃金と読み替えて賃金の低下を判断することになります。



関連blog記事
2006年9月11日「改正高年齢法への対応は67.2%の企業が継続雇用制度を選択」
https://roumu.com
/archives/50717803.html

2006年6月12日「改正高齢法に基づく雇用確保措置の実施状況」
https://roumu.com
/archives/50598140.html

カテゴリー「高年齢者雇用安定法改正」
https://roumu.com
/archives/cat_50005220.html


参考リンク
ハローワーク「雇用継続給付」
http://www.hellowork.go.jp/html/info_1_h3d.html
千葉労働局「高年齢者雇用継続給付について」
http://www.chiba-roudoukyoku.go.jp/seido/antei/antei06.html
厚生労働省「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書及び労働政策審議会に対する「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」の諮問について」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/01/s0109-2.html


(宮武貴美)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。