[中国労働契約法]実務への影響が大きい経済補償金

 中国労働契約法については当ブログでこれまで2回記事を掲載しました。今回のレポートは2008年1月10日に作成していますが、2008年1月から施行されている労働契約法の実際の運営を左右するはずの、労働契約法実施細則がまだ公表されていません。いずれにしても、この実施細則によって、中国に進出している企業のとるべき対応が決定するので、一日も早い発表が待たれるところです。さて、今回は中国労働契約法のうち、実務において金銭的コスト面での影響が大きい経済補償金について取り上げたいと思います。



 この経済補償金については今回大きく取り上げられており、実際に一部企業において、経済補償金の支払い金額を減額させるために、解雇→再雇用という行為がなされるほど、敏感になっています。従来から経済補償金という制度はあったのですが、今回の労働契約法により、支給が義務付けられるケースが多くなると予想されています。従来制度との最大の違いは、契約更新時に更新しない場合は支給対象外とされていたのが、労働契約法においては、従業員が契約更新を望む場合は、契約更新時に更新をしない場合でも、経済補償金の支払いが必要になる点といえます。こうした理由から支給が必要となるケースが多くなると見込まれる経済補償金ですが、上限規定も用意されています。経済補償金の計算は、「勤続年数×平均賃金」となりますが、この「勤続年数」および「平均賃金」のそれぞれに上限が規定されています。「勤続年数」は上限が12年となり、「平均賃金」は、企業が存在している地域の平均賃金の3倍が上限となります。


 なお、この経済補償金の勤続年数のカウントですが、労働契約法第97条には次のように規定されています。
「本法の施行日に存続している労働契約を本法の施行後に解除する場合で、本法46条の規定によって経済補償金の支払いが必要となる場合は、勤続年数は本法の施行日から計算する。本法の施行前に当時の関連規定によって、労働者に経済補償金を支払うべき場合、当時の関連規定が適用される」


 第46条は、経済補償金の支払うケースを規定している条文であるため、原則として勤続年数のカウントは2008年1月1日となり、従来から支払う必要がある場合は、その規定が適用されるということになります。この従来から支払う必要がある場合がどういった場合をさすのか、具体的な例示がないため、何ともいえない部分がありますが、条文からは、例えば労働契約法によって新たに支給が義務付けられた「契約更新時に更新しない場合」は、2008年1月から勤続年数をカウントすることができるかもしれません。


 勤続年数をどこからカウントするかは、実際の支給金額に大きな影響を与えることとなるため、この意味でも実施細則の発表が待たれるところです。



関連blog記事
2008年1月12日「[中国労働契約法]労働契約と従業員名簿」
https://roumu.com
/archives/51217540.html

2008年1月7日「[中国労働契約法]就業規則策定のススメ」
https://roumu.com
/archives/51217534.html


(上海名南企業管理咨詢有限公司 近藤充)


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