派遣先責任者選任義務の範囲
一昨年から昨年にかけて、偽装請負・偽装派遣が社会的問題となったことが記憶に新しいですが、派遣労働者は多くの職場で年々増加しており、企業の人事労務管理上、様々な注意が求められています。そこで今回は、派遣先企業が注意しなければならない事項の一つである、派遣先責任者の選任義務について取り上げましょう。
【質問】
当社はこれまで直接雇用した労働者により業務を運営してきました。増産時には数ヶ月勤務してもらうパート労働者で対応をしてきたのですが、最近、採用状況も厳しくなり、パート労働者の確保もままならない状況になっています。そこで、派遣で数名の労働者を確保しようと考えています。派遣会社に依頼したところ、派遣先責任者を選任してくださいとの話がありましたが、数名の派遣労働者を派遣してもらうだけでも選任が必要なものでしょうか?
【回答】
派遣先責任者は、派遣先における派遣労働者の適正な就業を確保するために選任が義務付けられているものです。派遣先責任者は労働関係法令に関する知識を有する者であること、人事・労務管理等について専門的な知識または相当期間の経験を有する者であること、派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者であること等が求められており、これらの職務について的確に遂行することができる者を選任するよう努めることとされています。
今回のご質問である派遣先責任者の専任ですが、事業所等における派遣労働者の数について1人以上100人以下を1単位とし、1単位につき1人以上ずつ選任しなければならないとされています。しかし同時に、事業所等における派遣労働者の数と当該派遣先が雇用する労働者の数を加えた数が5人以下のとき、または当該労働者派遣の期間が1日を超えない場合については選任することを要しないとされています。よって今回のケースで考えると、現在、事業所で直接雇用している労働者の人数と派遣労働者の人数の合計が5人を超えない範囲であれば派遣先責任者の選任までは必要とされません。
【まとめ】
労働力の多様化や人材不足の中で、今後も派遣労働者の管理の問題は年々重要性が増してくると予想されます。例え派遣先責任者を選任する必要がない場合でも派遣先としての責任が免れる訳ではありませんでの、労働者派遣法についてはその概要と同時に今後の改正の動向について注意しておきたいところです。
関連blog記事
2007年10月20日「8年間で企業における派遣労働者の割合が倍増!」
https://roumu.com
/archives/51128275.html
2007年10月4日「ハローワークにおける派遣・請負の求人確認が厳格化」
https://roumu.com
/archives/51099910.html
参考リンク
厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領 第9 派遣先の講ずべき措置等」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou/dl/9.pdf
(宮武貴美)
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