[ワンポイント講座]派遣社員の健康診断は派遣先・派遣元のどちらが行うのか

 水曜日新企画「人事労務ワンポイント講座」ですが、今日はその第5回です。近年、社員の健康管理が労務管理上の大きな課題の一つとなっており、労働基準監督署の調査においても法定健康診断の実施について重点的にチェックが行われています。そこで今回は派遣社員の健康診断における注意点についてお話しましょう。



 厚生労働省が実施している派遣労働者実態調査(平成16年)によれば、派遣労働者が就業している事業所の割合は31.5%にも上っており、多くの企業で積極的に労働者派遣が活用されていることが分かります。そもそも派遣社員は派遣元との間に雇用関係が存在し、派遣先との間においては指揮命令関係によって結ばれています。そのため、例えば賃金の支払や労働時間の枠組みの設定部分については派遣元と派遣社員との間の労働契約で定め、具体的な労働時間の決定については派遣先の方で決定するなど、派遣元および派遣先との間で様々な責任が分担されています。それでは健康診断については、派遣元、派遣先のどちらが行うことになっているのでしょうか。


 そもそも健康診断は、労働安全衛生法第66条第1項により事業所に実施が義務付けられているものです。企業には雇い入れているすべての社員が安全に業務に従事できるようにするべき義務(安全配慮義務)が課せられており、今年3月に施行された労働契約法第5条の中でも、労働者の安全への配慮が明記されています。


 それでは以下では、健康診断の取り扱いについて順に解説していきましょう。
一般健康診断
 雇い入れ時ないしは定期に行われる一般健康診断は、労働者の「一般的な健康の確保をはかることを目的」としたもの(昭和47年9月18日 基発602号)とされているため、雇用期間中は雇用主である派遣元に実施義務が課されています。そして健康診断の結果、異常の所見があると診断された派遣社員について、派遣元は医師等の意見を聞く必要があります。さらに、その意見に基づき必要がある場合は、派遣元と派遣先の双方が作業転換等の措置義務を負い、話し合いを行うなどして業務内容や就労時間の見直しなどをしていくことになります。
特殊健康診断
 政令で定める有害業務(たとえば高圧室内作業、放射線業務など)に従事する者については、特殊健康診断の実施が義務づけられています。派遣社員がこのような有害業務に就く場合、この特殊健康診断については、派遣元ではなく派遣先の方に実施義務が課されています。そのため、派遣先が特殊健康診断に基づき健康診断個人票を作成し、その書面を派遣元に送付する必要があります。また、この書面については5年間保存することになっており、これに違反した場合は、30万円以下の罰金が課せられます。


 また診断の結果、異常の所見がある者についての医師等からの意見聴取義務は、特殊健康診断を実施する派遣先が負うことになりますが、健康診断実施後の作業転換等の措置義務は派遣元と派遣先の双方が負っていることにも注意が必要です。そのため、派遣元はどの派遣社員が特殊健康診断の対象となっており、実際に健康診断が行われているのかを定期的にチェックしていくことが求められます。



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2008年3月22日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働基準法編)」
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参考リンク
厚生労働省「派遣労働者実態調査結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/04/index.html


(福間みゆき)


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[関連法規]
労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)
 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。


労働安全衛生法 第66条(健康診断)
 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。


労働安全衛生法 第66条の3(健康診断の結果の記録)
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第66条第1項から第4項まで及び第5項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。


労働安全衛生法 第66条の4(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。


第66条の5(健康診断実施後の措置)
 事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条第1項に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。


労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 第45条(労働安全衛生法の適用に関する特例等)
 労働者がその事業における派遣就業のために派遣されている派遣先の事業に関しては、当該派遣先の事業を行う者もまた当該派遣中の労働者を使用する事業者(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第2条第3号に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)と、当該派遣中の労働者を当該派遣先の事業を行う者にもまた使用される労働者とみなして、同法第3条第1項、第4条、第10条、第12条から第13条(第2項を除く。)まで、第13条の2、第18条、第19条の2、第59条第2項、第60条の2、第62条、第66条の5第1項、第69条及び第70条の規定にこれらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。この場合において、同法第10条第1項中「第25条の2第2項」とあるのは「第25条の2第2項(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第45条第3項の規定により適用される場合を含む。)」と、「次の業務」とあるのは「次の業務(労働者派遣法第44条第1項に規定する派遣中の労働者(以下単に「派遣中の労働者」という。)に関しては、第2号の業務(第59条第3項に規定する安全又は衛生のための特別の教育に係るものを除く。)、第3号の業務(第66条第1項の規定による健康診断(同条第2項後段の規定による健康診断であって厚生労働省令で定めるものを含む。)及び当該健康診断に係る同条第4項の規定による健康診断並びにこれらの健康診断に係る同条第5項ただし書の規定による健康診断に係るものに限る。)及び第5号の業務(厚生労働省令で定めるものに限る。)を除く。第12条第1項及び第12条の2において「派遣先安全衛生管理業務」という。)」と、同法第12条第1項及び第12条の2中「第10条第1項各号の業務」とあるのは「派遣先安全衛生管理業務」と、「第25条の2第2項」とあるのは「第25条の2第2項(労働者派遣法第45条第3項の規定により適用される場合を含む。)」と、「同条第1項各号」とあるのは「第25条の2第1項各号」と、同法第13条第1項中「健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下」とあるのは「健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(派遣中の労働者に関しては、当該事項のうち厚生労働省令で定めるものを除く。第3項及び次条において」と、同法第18条第1項中「次の事項」とあるのは「次の事項(派遣中の労働者に関しては、当該事項のうち厚生労働省令で定めるものを除く。)」とする。
(第2項省略)
3 労働者がその事業における派遣就業のために派遣されている派遣先の事業に関しては、当該派遣先の事業を行う者を当該派遣中の労働者を使用する事業者と、当該派遣中の労働者を当該派遣先の事業を行う者に使用される労働者とみなして、労働安全衛生法第11条、第14条から第15条の3まで、第17条、第20条から第27条まで、第28条の2から第30条の3まで、第31条の3、第36条(同法第30条第1項及び第4項、第30条の2第1項及び第4項並びに第30条の3第1項及び第4項の規定に係る部分に限る。)、第45条(第2項を除く。)、第57条の3から第57条の5まで、第59条第3項、第60条、第61条第1項、第65条から第65条の4まで、第66条第2項前段及び後段(派遣先の事業を行う者が同項後段の政令で定める業務に従事させたことのある労働者(派遣中の労働者を含む。)に係る部分に限る。以下この条において同じ。)、第3項、第4項(同法第66条第2項前段及び後段並びに第3項の規定に係る部分に限る。以下この条において同じ。)並びに第5項(同法第66条第2項前段及び後段、第3項並びに第4項の規定に係る部分に限る。以下この条において同じ。)、第66条の3(同法第66条第2項前段及び後段、第3項、第4項並びに第5項の規定に係る部分に限る。以下この条において同じ。)、第66条の4、第68条、第71条の2、第9章第1節並びに第88条から第89条の2までの規定並びに当該規定に基づく命令の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。この場合において、同法第29条第1項中「この法律又はこれに基づく命令の規定」とあるのは「この法律若しくはこれに基づく命令の規定(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第45条の規定により適用される場合を含む。)又は同条第10項の規定若しくは同項の規定に基づく命令の規定」と、同条第2項中「この法律又はこれに基づく命令の規定」とあるのは「この法律若しくはこれに基づく命令の規定(労働者派遣法第45条の規定により適用される場合を含む。)又は同条第10項の規定若しくは同項の規定に基づく命令の規定」と、同法第30条第1項第5号及び第88条第7項中「この法律又はこれに基づく命令の規定」とあるのは「この法律又はこれに基づく命令の規定(労働者派遣法第45条の規定により適用される場合を含む。)」と、同法第66条の4中「第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2」とあるのは「第66条第2項前段若しくは後段(派遣先の事業を行う者が同項後段の政令で定める業務に従事させたことのある労働者(労働者派遣法第44条第1項に規定する派遣中の労働者を含む。)に係る部分に限る。以下この条において同じ。)、第3項、第4項(第66条第2項前段及び後段並びに第3項の規定に係る部分に限る。以下この条において同じ。)又は第5項ただし書(同条第2項前段及び後段、第3項並びに第4項の規定に係る部分に限る。)」とする。
(第4項省略)
5 その事業に使用する労働者が派遣先の事業における派遣就業のために派遣されている派遣元の事業に関する第3項前段に掲げる規定及び労働安全衛生法第45条第2項の規定の適用については、当該派遣元の事業の事業者は当該派遣中の労働者を使用しないものと、当該派遣中の労働者は当該派遣元の事業の事業者に使用されないものとみなす。
(第6項~第11項省略)
12 前2項の規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。


労働安全衛生法施行規則第44条(定期健康診断)
 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、視力及び聴力の検査
四 胸部エックス線検査及び喀痰かくたん検査
五 血圧の測定
六 貧血検査
七 肝機能検査
八 血中脂質検査
九 血糖検査
十 尿検査
十一 心電図検査


[関連通達]
昭和47年9月18 基発第602号
 (2) 第六六条関係
ロ 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。