景気と連動する人事制度

 米国発世界同時不況の影響で、また数年の間は不況期になると言われている。人事制度は景気の影響を受けるが、不況期になれば短期的成果に軸足を移さざるを得ず、ついこの前までバッシングされていた成果主義が装いも新たに復活するだろう。前回、バブル崩壊後には成果主義が流行し、日本的年功序列人事制度がバッシングに遭った。そして景気回復が本調子となったときに揺り戻しが起こり、成果主義バッシングが始まった。このように景気が悪くなると流行る「○○主義人事」だが、大きな波がこれまで2回あった。1回目は円高不況期に普及した能力主義、2回目はバブル崩壊後の平成不況期に騒がれた成果主義である。さて今度の景気の谷ではどのような主義になるのか・・。


 しかし、企業と向き合うコンサルティングの現場において、実は1回目の能力主義と2回目の成果主義において、クライアントが要望される制度構築のコンセプトや内容は同じものであった。専門的な意味での能力主義を成果主義という言葉に替えただけ、と言ってもよい。実はどちらも専門的な意味での能力主義(結果の積み重ねから類推される人の保有能力=成果再現性を重視する方法)人事と、賞与に反映されることが多い期間成果評価の制度構築である。そしてどちらも、「限られた原資を配分するにあたって、貢献度に見合った処遇をしたい」というテーマを目指していた。そしてどちらも表面的には「カネの合理的な配分」を目指していたが、原理原則から入って人事評価の目的を話し合い、共通の認識をするプロセスを経ると、カネの配分というのは重要ではあるが、これは副次的なものであることが判ってくる。副次的というのは、やってもやらなくてもカネが同じであればモチベーションが下がってしまう(衛生要因)場合は、その企業に最適な塩梅(あんばい)でその衛生要因を排除する報酬制度を設計する、ということである。カネで差をつけさえすればモチベーションが上がるわけではないというのは定説になっているが、放置しておくとカネの問題はヤル気を殺ぐ要因になるので留意は必要である。このカネの差のつけ方や程度は、その企業にとっての最適なバランスが存在する。これはその企業のビジネスモデルが短期か中期かによって影響されることが多い。


 ゆえに、次の主義がどのような名称になろうが、現場で実施されることはそれほど変わらないだろう。但し、留意すべきは長期的トレンドである少子高齢化が及ぼす影響である。特に高齢社会における人事制度の設計は今までにない枠組みが必要になる。



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(小山邦彦)


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