一時帰休により休業手当の支払があった場合の離職票の記入方法

 経済情勢の悪化に伴う生産調整により、一時帰休を実施する事業所が激増しています。そこで今回は、実際に顧問先様から受けた質問の中から、一時帰休により休業手当を支払った後に退職した社員の雇用保険被保険者離職証明書(以下、「離職票」という)の書き方について取り上げてみましょう。



[質問]
 当社では、受注量の急激な減少により、生産調整として年末休暇を2日、年始休暇を3日増やしました。各日については、労働基準法に従い、平均賃金の6割に当たる休業手当を支払っています。今回、1月末で退職する社員がいるのですが、この社員の離職票はどのように記載すればよいのでしょうか?なお、当社の賃金締切日は月末になっています。


[回答]
 休業手当の支払いを行った際には、離職票の備考欄にその旨を別途記載する必要があります。


[解説]
 休業手当は労働基準法により平均賃金の6割以上という定めがありますので、一般的に通常の賃金より低額になります。そのため通常の雇用保険基本手当日額の計算方法と同様に行うと、この日額も低額となる可能性がありますので、支払われた休業手当を勘案した計算方法にて日額が算出されることになっています。


 具体的には、通常の離職票と同様に休業手当を含めた賃金額および支払基礎日数を記載をした上で、備考欄に休業手当の対象となった日数と金額を月ごとに記載することとされています。これにより、基本手当日額を計算する際に、休業手当も含めて算出したものと備考欄に記載した休業手当を除いて算出したものの2つを比較し、高い額が基本手当日額とされます。備考欄に記載を忘れて処理が進むと、結果的に基本手当日額が低額になる可能性があるため、一時帰休を実施したような場合には、この点に十分に注意して離職票の作成を行わなければなりません。


[関連法規]
労働基準法 第26条(休業手当)
 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。



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参考リンク
愛知労働局「雇用保険のしおり(被保険者関係)」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/headlines/roudouhoken/pdf/siori2008-10-2.pdf


(宮武貴美)


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