[ワンポイント講座]1日のうち半日を休業した場合の休業手当はどのように計算するのか

 2008年12月27日のブログ記事「雇用調整助成金の相談件数 愛知が全体の約70%と断トツ」でもお伝えしたとおり、自動車関連を中心に、一時帰休を行う企業が増えています。年明け以降は年度末に向け、更に厳しい状況となるのは確実であり、これまでは非正規労働者が雇用調整の対象となっていたものが、年明けからは正社員にもその影響が及んでいくのではないかと予想されています。雇用調整のうち整理解雇は最終手段であり、まずは一時帰休などの解雇回避努力を行うことが重要です。そこで今回のワンポイント講座では、1日のうち半日を休業した場合の休業手当の計算について取り上げてみましょう。


 生産調整のためなど、会社の責に帰すべき事情による休業を行う場合は、労働基準法第26条の定めに基づき、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払うことが必要です。通常は生産調整などにより工場を終日閉めるなどの対応が多いとは思いますが、ここで問題になるのが、例えば午前中は業務を行い、午後から休業するなど、1日の一部分を休業した場合の休業手当の取り扱いです。この件に関して通達(昭和27年8月7日 基収3445号)でその取扱いが示されており、「1日の所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業がなされた場合にも、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければならないから、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない」とされています。具体例を挙げてみましょう。平均賃金が10,000円の場合、休業手当は6,000円(10,000円×60%)となります。仮に半日働いた場合の賃金が5,000円であったときは、6,000円-5,000円=1,000円となり、休業手当として1,000円支払う必要があります。もしも働いた分の賃金が7,000円であったときは、7,000円>6,000円となることから休業手当を支払わなくてもよいということになります。


 一時帰休については時給者がその対象となることがありますので、この場合の取扱いについても補足しておきましょう。例えば、月・水・金曜日の週3日勤務の者がおり、月・水曜日が8時間、金曜日が4時間勤務とます。もしも金曜日を会社都合の休業とした場合の取扱いはどのようになるのでしょうか。この取扱いについても先の通達の中で示されており、「労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき休業の場合においては、その休業期間中平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと規定しており、従って一週の中ある日の所定労働時間がたまたま短く定められていても、その日の休業手当は平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない」としています。つまり、通常勤務した時間分の賃金の金額に関わらず、平均賃金の6割以上を支払う必要があるのです。そのため例えば平均賃金が7,000円の場合、休業手当は4,200円となりますが、仮に時給が1,000円とすると、金曜日4時間勤務すれば賃金は4,000円となりますが、休業した場合、平均賃金の6割を支払う必要がありますので、4時間勤務した分の賃金(4,000円)よりも多い、4,200円を支払う必要があるという結論になります。このように通常通りの4時間勤務した場合の賃金額より休業手当が多くなるケースがあるので注意が必要です。


[関連法規]
労働基準法 第26条(休業手当)
 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。



関連blog記事
2008年12月27日「雇用調整助成金の相談件数 愛知が全体の約70%と断トツ」
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2008年12月20日「雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金の支給要件緩和」
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2008年12月15日「今後、激増が予想される企業の一時休業・一時帰休」
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参考リンク
茨城労働局「会社都合による休業中は休業手当の支払が必要」
http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/soumu/qa/chingin/chingin02.html


(福間みゆき)


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