[ワンポイント講座]20歳前傷病による障害基礎年金にかかる所得制限

20歳前傷病による障害基礎年金にかかる所得制限 国民年金に加入する前である20歳前の怪我や病気が原因で一定の障害状態になった場合、20歳前傷病による障害基礎年金を受給することができますが、一般の障害基礎年金にはない所得制限が設けられています。本日のワンポイント講座では、この所得制限に焦点をあてて取り上げたいと思います。


 本題に入る前に障害基礎年金の内容について簡単に押さえておきましょう。障害基礎年金は、初診日から1年6ヶ月経過した日に一定の障害状態である者が、保険料納付要件を満たしているときに支給されます。一方、20歳前傷病による障害基礎年金は、20歳前に初診日のある者が、障害の状態にあって20歳に達したとき、または20歳に達したあと、障害の状態となったときに支給されます。


 これらの所得制限ですが、通常の障害基礎年金には適用がなく、上記保険料納付要件を満たした者に支給されます。これに対し、20歳前傷病による障害基礎年金は、国民年金への加入義務が20歳以上であるため、保険料を納付していない者に対して支給されるものになります。したがって、通常の障害基礎年金のように保険料納付要件を問われることはありませんが、一定以上の所得がある場合、一部又は全部が支給制限されます。


 この所得制限は、前年の所得額が360.4万円を超える場合には年金額の2分の1相当額、462.1万円を超える場合には全額が支給停止となります(図表はクリックして拡大)。扶養親族等がいる場合には、この金額に1人あたり38万円を加算した額が支給停止となります。20歳前傷病による障害基礎年金に所得制限があることは、見落とされがちな点であるため、実際に申請する場合や従業員から問合せがあったときには注意が必要です。なお、受給者の所得確認は毎年7月末までに提出する「現況届」によって行われ、その年の8月から翌年の7月まで適用されます。


[関連法規]
国民年金法 第30条の4
 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において、障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは、その者に障害基礎年金を支給する。
2 疾病にかかり、又は負傷し、その初診日において20歳未満であった者(同日において被保険者でなかった者に限る。)が、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日後において、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において、その傷病により、65歳に達する日の前日までの間に、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、その者は、その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
3 第30条の2第3項の規定は、前項の場合に準用する。


国民年金法 第36条の3
 第30条の4の規定による障害基礎年金は、受給権者の前年の所得が、その者の所得税法(昭和40年法律第33号)に規定する控除対象配偶者及び扶養親族(以下「扶養親族等」という。)の有無及び数に応じて、政令で定める額を超えるときは、その年の8月から翌年の7月まで、政令で定めるところにより、その全部又は2分の1(第33条の2第1項の規定によりその額が加算された障害基礎年金にあっては、その額から同項の規定により加算する額を控除した額の2分の1に相当する部分の支給を停止する。
2 前項に規定する所得の範囲及びその額の計算方法は、政令で定める。



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(佐藤浩子)


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