海外派遣者の社保取扱い(2)社会保障協定とは

 2010年2月27日のブログ記事「海外派遣者の社保取扱い(1)健康保険・厚生年金保険の適用」より数回に亘ってお届けする海外派遣者の取扱いに関する短期連載ですが、第2回目の本日は、社会保障協定の概要と協定相手国で就労する場合の手続きについて取り上げたいと思います。


 社会保障協定は、大きく分けて年金保険料の二重負担の解消と、掛け捨てを防止することを目的として諸外国との間に締結されています。
二重負担の解消
 日本の年金制度に加入中の者を海外へ派遣した場合、派遣先国の年金制度へも加入しなければならないことがあります。このような場合、派遣期間が5年を超えなければ、原則として派遣先国の年金制度への加入を免除することにより、保険料の二重負担を解消します。


保険料掛け捨てを防止
 現在の日本の老齢年金において、25年の最低加入期間が設けられているように、海外の年金制度においても一定期間以上年金制度に加入しなければ受給権が発生しないことがあります。このため、短期間海外の年金制度に加入しただけでは、最低加入期間を満たすことができず、負担した保険料が掛け捨てになるという問題が発生します。このような場合、双方の年金加入期間を通算することを認めることにより、保険料の掛け捨てを防止します。


 次に協定相手国で就労する場合の手続きについてですが、協定相手国の社会保障制度への加入が免除される者は、日本の社会保障制度に加入していることを証明する「適用証明書」の交付を、年金事務所から受ける必要があります。この適用証明書を、海外派遣者が協定相手国の事業所に提出することで、免除を受けることができます。一方、協定相手国の社会保障制度へ加入する者は、国内の事業主が資格喪失届を年金事務所へ届け出る必要があります。この場合、資格喪失届には、協定相手国制度へ加入した旨がわかる書類を添付することとなります。



関連blog記事
2010年2月27日「海外派遣者の社保取扱い(1)健康保険・厚生年金保険の適用」
https://roumu.com
/archives/51701697.html

2009年7月25日「今年6月にチェコ共和国との社会保障協定が発効」
https://roumu.com
/archives/51593122.html

2007年12月3日「カナダとの社会保障協定 平成20年3月より発効」
https://roumu.com
/archives/51184510.html

2007年7月13日「海外派遣者の社会保険・雇用保険・労災保険の取り扱い」
https://roumu.com
/archives/51017702.html


参考リンク
厚生労働省「社会保障協定」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/shakaihoshou.html
日本年金機構「社会保障協定」
http://www.nenkin.go.jp/agreemant/index.html


(佐藤浩子)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。