海外派遣者の社会保険・雇用保険・労災保険の取り扱い
先日、当ブログにおいて海外に社員を派遣する場合の労災の問題ついて取り上げたところ、「社会保険はどうなるの?」「税金はどうなるの?」という質問が寄せられました。そこで今後、社員の海外派遣の際の様々な実務について、テーマを絞ってQ&A形式で取り上げて行こうと思います。それでは本日は海外派遣者の社会保険について取り上げることにしましょう。
[質問]
当社では、3年の予定で中国に派遣している社員がいます。海外勤務ですが、給料は全額当社から支払っており、労働時間等の管理も毎月本社に報告するように指示しています。ご家族は日本に残っており、健康保険・年金のことについて心配をしていますが、今回のようなケースでは、社会保険の加入は続けられるのでしょうか?
[回答]
海外勤務者に関する社会保険の問題は、まだまだ明確なルールがあるとは言えません。その中で一般的には以下のように対応を行ないます。
社会保険
ご質問のケースでは、日本の本社から給与を支給し、労務管理も行なっていますので、日本における社会保険の加入を継続することとなります。なお、日本との間の社会保障協定を発効しているドイツ、イギリス、アメリカ等とは、その協定に基づいた対応が必要となります。
雇用保険
雇用保険についても、日本の本社との雇用関係が継続しており、給与も支給されていますので、継続して加入することとなります。
労働者災害補償保険(労災保険)
一方、労災保険は事業場主義のため、継続して加入することはできません。7月10日のブログ記事「海外派遣者の労災保険特別加入」で取り上げたように、海外派遣者の特別加入制度の利用や民間の傷害保険への加入を検討する必要があるでしょう。
[まとめ]
海外で給与が支給される場合、日本と海外の両方で給与が支給される場合など、給与の支払方法や割合は様々です。そのため人事労務管理の状況と併せて判断されるケースが多く、取扱いについては管轄の社会保険事務所、健康保険組合等に事前に相談されることをお勧めいたします。
関連blog記事
2007年7月10日「海外派遣者の労災保険特別加入」
https://roumu.com
/archives/51015120.html
2007年07月06日「社員を海外に派遣する際の労災保険特別加入制度」
https://roumu.com
/archives/51010500.html
2006年10月25日「ベルギーとの社会保障協定 平成19年1月1日発効が正式決定」
https://roumu.com
/archives/50771521.html
2006年09月16日「ベルギー・フランスとの社会保障協定が発表」
https://roumu.com
/archives/50725809.html
参考リンク
社会保険庁「社会保障協定」
http://www.sia.go.jp/seido/kyotei/index.htm
(宮武貴美)
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。