精神障害にかかる労災支給決定件数と高い相関関係を持つ「職場での対人関係トラブル」

職場での対人関係トラブルと精神疾患の相関関係 2011年6月16日のブログ記事「精神障害にかかる労災支給決定件数 前年比1.3倍の308件と急増 意外と低い長時間労働との相関関係」では、厚生労働省は先日、平成22年度の「脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況」の結果の概要と、精神障害の支給決定事案と時間外労働時間数の相関関係について取り上げました。そこで分かったのは、平成22年度の308件のうち、80時間以上の時間外労働の状態にあったのは全体の4割の127件に止まっており、精神障害の発症においては長時間労働以上に職場内での人間関係を初めとした心理的負荷が大きいということ。そこで本日は、精神障害等による労災支給決定件数と、その発症における出来事の関係について見ていきたいと思います。

 以下は平成22年の精神障害などに関する労災支給決定件数全308件のうち、その発症における具体的出来事の上位10項目です。

  1. 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった 41件
  2. ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた 39件
  3. 悲惨な事故や災害の体験(目撃)をした 32件
  4. 勤務・拘束時間が長時間化する出来事が生じた 25件
  5. 上司とのトラブルがあった 17件
  6. 重度の病気やケガをした 16件
  7. 顧客や取引先からクレームを受けた 10件
  8. 退職を強要された 10件
  9. 複数名で担当していた業務を一人で担当するようになった 9件
  10. セクシュアルハラスメントを受けた 8件

 このようにトップは「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」の41件ですが、赤字で表記した職場での対人関係のトラブルは上位10項目の中に3つも入っています。この3つを合計すると64件と、全件数の2割を超える水準となっており、改めて職場内でのコミュニケーションの改善やハラスメント対策の重要性を感じさせられます。文字通り、「安心して働くことができる職場」を如何に作っていくのかという人事労務管理において根源的な課題について、いまこそ考えることが求められています。


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2011年6月16日「精神障害にかかる労災支給決定件数 前年比1.3倍の308件と急増 意外と低い長時間労働との相関関係」
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2011年4月5日「愛知県が作成した「職場のメンタルヘルス対策ガイドブック」」
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2010年12月6日「こころの耳が提供するメンタルヘルスに関する学習コンテンツ」
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参考リンク
厚生労働省「平成22年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001f1k7.html

(大津章敬)

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