[改正労契法(1)]制定法化された有期労働契約の雇止め法理

keiyaku3 今国会では、人事労務関連の法改正が多く成立していますが、2012年8月10日には改正労働契約法が公布され、一部が同日から施行されています。そこで、今回から数回に亘り、この改正労働契約法について、その改正点と実務上への影響を取り上げることとします。第1回目の今回は、公布日同日に施行された有期労働契約の更新等について取り上げましょう。

 ここ数年、有期契約労働者の雇止めにかかるトラブルは増加しており、有期労働契約の更新等のルールの明確化が課題となっていました。今回の改正では、これまで最高裁判決で確立されている雇止めに関する判例法理(雇止め法理)が労働契約法の条文として加えられ、制定法化されました。これにより、以下の2つのうちいずれかに該当する場合であって、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが認められず、有期労働契約が締結または更新されたものとみなされることとなります。
有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態となっている場合
有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合

 これらに該当するかは、画一的に判断できるわけではなく、雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されるとされています。したがって、有期労働契約の労働者を雇用する際には、有期労働契約とする目的をしっかりと押さえ、その更新の管理を徹底する必要があるでしょう。なお、有期労働契約が締結または更新されたものとみなされる際には、従前の有期労働契約と同一の労働条件(契約期間を含む)での成立がなされたものとされます。

 この雇止め法理は、既に裁判で確立されたものであり、その内容や適用範囲が変更になったわけではないことは、通達でも示されています。したがって、実務上の対応として大きな対応が必要であるとは言えませんが、法定化されたことで、根拠がより明確になり、一定範囲での紛争の増加に繋がる可能性は否定できないでしょう。さらには、労働契約について「申込みを承諾したものとみなす」という規定となっていることで、労働契約が継続的に存在しているのだという主張が行われる可能性は高くなっています。改めて有期労働契約の労働者の雇用管理方法を見直すきっかけとはしたいものです。


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http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1209sr3rd.html


関連blog記事
2012年8月16日「改正労働契約法に関する通達が発出されました」
https://roumu.com
/archives/51947946.html

2012年8月10日「改正労働契約法が公布 改正労働者派遣法は10月1日施行で決定」
https://roumu.com
/archives/51946955.html

参考リンク
厚生労働省「労働契約法が改正されました~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65.html
厚生労働省「改正労働契約法について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

(宮武貴美)

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