[改正労契法(2)]有期労働契約の無期転換ルールにおける5年の考え方

keiyaku1 改正労働契約法連載の第2回は、今回の改正の中でもっとも注目されている有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換について取り上げましょう。

 現在、有期労働契約の反復については特段の定めがなく、雇止めが可能か否かは別として、反復更新される契約の期間に上限は設けられていません。今回の法改正では、有期労働契約が通算5年間を超えて反復更新された場合には、その有期契約労働者が使用者に対し無期転換申込権を有することとなり、申し込むを行うことで、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換するという仕組みが導入されます。

通算契約期間5年の考え方
 ここでの5年というのは、同一の使用者で締結された複数の有期労働契約の契約期間を通算した期間を指します。この際の使用者とは、法人であれば法人単位、個人事業主であれば個人事業主を指すため、雇用契約書や労働条件通知書が法人の事業主名で行われていない場合でも通算することになります。通達では、これを無期転換ルールと呼んでいます。また、一時的に直接雇用から派遣形態や請負形態にすることで、この無期転換ルールに該当しないようにすることは認められません。

クーリング期間
 有期労働契約の期間を通算して考えるときに問題となるのが、有期労働契約と次の有期労働契約の間に一定期間、契約がない期間があった場合に前後の期間を通算するかということですが、これにはクーリング期間という考え方を用いています。同一の有期契約労働者と使用者との間で、間をおいて有期労働契約が再度締結された場合、その間の期間の長さについて以下のいずれかに該当する場合には、通算契約期間がリセットされ、期間通算されないクーリング期間とされます。
 (1)6ヶ月以上である場合
 (2)その直前の有期労働契約の契約期間(複数の有期労働契約が間を置かずに連続している場合または契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合は、それらの有期労働契約の契約期間の合計)が1年未満の場合にあっては、その期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間以上である場合

 (2)の厚生労働省令は、まだ公布されていないため、(2)のより具体的説明は厚生労働省令が公布された際に解説を加えることにしましょう。

無期転換申込権の行使可能期間
 有期労働契約が通算契約期間5年を超える場合には、無期転換申込権が発生しますが、その権利を行使できる期間は、通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約の契約期間の初日から満了日までとされています。仮に権利を行使せずに、再度、有期労働契約が更新された場合には、新たに無期転換申込権が発生し、更新後の満了日まで行使できることとなります。

通算契約期間カウントの始期
 無期転換ルールにおいて問題となるのが、改正法施行日前の有期労働契約期間をどう見るかということですが、この点に関しては、附則でその取り扱いが明記されています。それによると、施行日以後の日を契約期間の初日とする期間の定めのある労働契約について適用するとしており、施行日前の日が初日である有期労働契約の契約期間は、通算契約期間には算入しないこととなっています。したがって、改正法の施行日によって、いつから通算されるか、いつ5年を超えるかが異なってきます。

 改正労働者派遣法にある労働契約申込みみなし制度では、違法派遣状態が終了してから1年を経過すると、申込みが撤回されることとなっていますが、この改正労働契約法では、通算契約期間5年を超えて有期労働契約が更新され続ける限りは無期転換申込権は消滅しないということになります。したがって、何らかの事情で雇止めをせざるを得ないときに、無期転換の申込みがあり、雇止めはできない状態になるという事態は容易に想像されます。この無期転換ルールの施行日はまだ決定されていませんが、有期労働者の雇用期間の取り扱いについては早めに社内で検討しておく必要があるでしょう。


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2012年8月24日「[改正労契法(1)]制定法化された有期労働契約の雇止め法理」
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参考リンク
厚生労働省「労働契約法が改正されました~有期労働契約の新しいルールができました~」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002hc65.html
厚生労働省「改正労働契約法について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html

(宮武貴美)

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