働き方改革実現会議で行われる65歳定年+70歳までの継続雇用、高年齢者雇用継続給付廃止の議論
昨日(2017年2月15日)のブログ記事「働き方改革実現会議 労働時間の上限を年間720時間で設定へ」では、一昨日に行われた第7回働き方改革実現会議における労働時間規制の議論について取り上げました。実はこの日の会議では、長時間労働対策と並び、高齢者雇用もテーマとなっていました。
今回の資料を見ると、東京大学水町先生の提出資料の中に、今後の高齢者雇用、そして雇用保険高年齢雇用継続給付の方向性に関する興味深い記述が見られますので、本日はその内容について取り上げましょう。
○現在の法律(高年齢者雇用安定法)は、事業主に、定年年齢を定める場合には60歳以上とすること(8条)、および、65歳までの高年齢者雇用確保措置(①定年年齢引上げ、②継続雇用制度、③定年制廃止のいずれか)をとること(9 条)を義務づけている。この60歳定年制・65歳までの雇用確保措置を、将来的に、65歳定年制・65歳以降(例えば70歳まで)の雇用確保措置に引き上げていくことが必要であり、そのための環境整備を政策的に進めていくこと(先進事例の情報提供・相談援助、データベースによる企業情報公開等)が重要になる。
○これと並行して、高齢者が、その希望・選択と能力に応じて、多様な形で、かつ、公正な処遇を受けつつ就労できるようにするための法的ルールの整備を進めていくことが緊要である。このような観点から、例えば、①高齢者が短時間や有期契約で働いている場合でも、就労の実態や能力等に応じた公正な処遇の実現を図っていくこと(第5回働き方改革実現会議「同一労働同一賃金ガイドライン案」参照)、②高齢者が兼業・副業やテレワーク等の形態でも安心して働けるようにするための法的ルールを整備すること(第2回働き方改革実現会議参照)が求められる。
○現在、60歳以上65歳未満の労働者を対象に、給与(賃金月額)の減額分を補う高年齢者雇用継続給付が支給されている(雇用保険法61条)が、これを受給するために60歳から65歳までの賃金月額を意図的に下げる(その引下げ分を賞与として支給する)といった行動が実務上広がっており、特に高齢者の積極的な活用を不可欠としている地方の中小企業等では、60歳代前半層の賃金決定に歪みを与えるこの制度の廃止を含めた再検討をしてほしいとの声がある。この制度(高年齢者雇用継続給付)の見直しを含め、高齢者が60歳以降、さらには65歳を超えても、その希望と能力に基づいて公正な処遇を受けながら働くことができる環境の整備を図っていくことが重要である。
このように将来的な65歳定年制+70歳までの継続雇用制度の導入、高齢者雇用における同一労働同一賃金の環境整備、そして雇用保険高年齢雇用継続給付の廃止を含めた再検討というテーマが掲げられています。高齢者の雇用のあり方と共に、その賃金決定の仕組みの見直しが迫られる日が近付いているようです。
※画像は塩崎大臣の提出資料
関連blog記事
2017年2月15日「働き方改革実現会議 労働時間の上限を年間720時間で設定へ」
https://roumu.com
/archives/52123843.html
2017年1月24日「労働時間規制 36協定の上限設定はほぼ間違いない状況に」
https://roumu.com
/archives/52122469.html
参考リンク
働き方改革実現会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/
(大津章敬)
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