労働政策審議会建議「時間外労働の上限規制等について」が公表されました
時間外労働の上限規制は大きな話題となっていますが、昨日、労働政策審議会は、塩崎恭久厚生労働大臣に対し、建議を行いました。この内容は、今年3月に決定した「働き方改革実行計画」を踏まえて、今年4月から、同審議会の労働条件分科会において審議を重ねてきた結果をまとめたもの。
非常に重要な内容ですので、今回から数回に分けて、その重要な論点について取り上げます。今回はもっとも重要なテーマである「時間外労働の上限規制の基本的枠組み」の内容について見ていきましょう。
現行の時間外限度基準告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせるともに、従来、上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定することが適当である。
・時間外労働の上限規制は、現行の時間外限度基準告示のとおり、労働基準法に規定する法定労働時間を超える時間に対して適用されるものとし、上限は原則として月45時間、かつ、年360時間とすることが適当である。かつ、この上限に対する違反には、以下の特例の場合を除いて罰則を課すことが適当である。また、一年単位の変形労働時間制(3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。以下同じ。)にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に鑑み、上限は原則として月42時間、かつ、年320時間とすることが適当である。
・上記を原則としつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間と規定することが適当である。
かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として、
休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内
休日労働を含み、単月で100時間未満
原則である月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回まで
とすることが適当である。なお、原則である月45時間の上限には休日労働を含まないことから、及びについては、特例を活用しない月においても適用されるものとすることが適当である。
・現行の36協定は、省令により「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的記載事項とされ、「1日を超える一定の期間」は時間外限度基準告示で「1日を超え3か月以内の期間及び1年間」としなければならないと定められている。今回、月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)、かつ、年360時間(一年単位の変形労働時間制の場合は320時間)の原則的上限を法定する趣旨を踏まえ、「1日を超える一定の期間」は「1か月及び1年間」に限ることとし、その旨省令に規定することが適当である。併せて、省令で定める協定の様式において1年間の上限を適用する期間の起算点を明確化することが適当である。
内容としてはこれまでも当ブログで取り上げてきた通りの内容ですが、いよいよ法制化に向けて議論が煮詰まってきた印象を受けます。それでは次回、建設業や運送業などで大きな影響が予想されるは限度時間の適用除外について取り上げましょう。
「時間外労働の上限規制等について(建議)本文はこちら
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000166797.pdf
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参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議「時間外労働の上限規制等について」を公表します」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html
(大津章敬)
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