労働契約の内容を労働者に十分理解させることが必要です

 平成20年3月施行の労働契約法について学び始めた服部社長と宮田部長。今回は、使用者と労働者が後でトラブルになったりしないように、第4条「労働契約の内容の理解の促進」について学ぶこととなった。



大熊社労士:
 引き続き労働契約法の第1章総則を確認していきましょう。第4条は「労働契約の内容の理解の促進」についてです。



第4条(労働契約の内容の理解の促進)
1 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。



服部社長服部社長:
 「労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする」というのは、労働者に労働条件をきちんと説明しないさいよ、ということでしょうか。
大熊社労士:
 そのとおりです。最近、行政からの指導もあって採用時に労働条件を明確にする会社が増えてきていますが、まだまだ十分ではありません。
服部社長:
 労働条件といえば、賃金や労働時間でしょう。これらは労働者が就職を決めるときのポイントですので、それを説明しない会社はないと思うのですが…。
大熊社労士:
 もちろん、賃金や労働時間はもっとも重要なものですが、最近はそれだけではなく仕事の具体的な内容のほか、休日や残業の程度などについても就職を決める際のウエイトとして高まってきていますので、これらについてもきちんと説明し、理解を得ておくことが必要です。また、労働者からの質問に誠実に答えることも大切ですね。
宮田部長宮田部長:
 労働者からの質問に誠実に答えるということですが、改正パートタイム労働法でパートタイマーから待遇についての説明を求められたときには、その待遇の決定にあたって考慮したことを説明することが義務付けられましたことと同じと考えればよいでしょうか?
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。よくご理解いただいており、私もたいへん嬉しいです。では、第2項をみてみましょう。



2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。



宮田部長:
 労働条件通知書のような書面を労働者に交付するということなら、大熊先生にアドバイスをもらってからは、わが社でも既にきちんとやっています。
大熊社労士:
 適切な対応をしていただき、ありがとうございます。この第2項の趣旨は、入社時や契約更新時に労働条件の内容について、後々に未確認であったり、言った言わないでトラブルにならないようにするため、特に重要な部分についてはできるだけその内容を書面で確認するように求めています。
宮田部長:
 書面の内容は、現在使っているものでよいでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、それで結構です。現在使っている様式は、労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)を根拠として厚生労働省より出されている雛形を私がアレンジしたものです。引き続き使ってください。なお定期昇給など定期的に変更されるものや、労使交渉を経て決定されるものについてまで、その都度書面での確認することを求めているものではないと考えられています。
服部社長:
 「期間の定めのある労働契約に関する事項を含む」とある括弧書きのところは、どのように考えたらよいでしょうか。特別な意味があるのでしょうか?
大熊社労士:
 期間の定めのある労働契約、いわゆる有期労働契約については、契約期間が終了するときに契約が更新されるのか、されないのか、また契約が更新される場合はどのような場合なのかを、契約する始めのときにはっきりさせておくように、ということです。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は労働契約法の第4条(労働契約の内容の理解の促進)について取り上げました。労働契約においては、一般的に使用者が考える労働条件を労働者に提示することになるわけですが、その際、労使の合意が適切になされるためには、その内容を労働者に理解できるようにすることが必要です。このため、訓示的な規定として使用者にそのような行動を求めたものです。なお、第2項括弧書きの有期労働契約については、契約の締結や更新、雇止めに関して次のような基準が示されていますので、使用者は注意が必要です。
契約期間満了後の更新の有無等を明示すること
3回以上更新された契約や1年を超えて継続勤務している労働者の契約を更新しない場合、契約期間満了の30日前までに雇止めを予告すること
労働者の求めに応じて、雇止めの理由を明示すること
契約更新の場合、契約の期間をできる限り長くするように配慮すること


[参考条文]
労働基準法第15条第1項(労働条件の明示)
 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。


労働基準法施行規則 第5条
 使用者が法第十五条第一項 前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項
2 法第十五条第一項 後段の厚生労働省令で定める事項は、前項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
3 法第十五条第一項 後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。



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2008年4月14日「労働契約の5原則について説明しましょう」
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2008年4月7日「労働契約法というのはどのような法律ですか?」
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2008年3月12日「最近の労働法令改正から見る労務管理のトレンド」
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2008年2月25日「3月1日より「有期労働契約が3回以上更新された場合」の雇止めにも30日前の予告が必要に」
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2008年2月19日「厚労省よりダウンロードできる労働契約法のポイント資料」
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2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」
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参考リンク
厚生労働省「労働契約法がスタート!~平成20年3月1日施行」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/index.html


(鷹取敏昭)


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