派遣期間の制限は派遣社員や派遣会社が変わった場合、どのようになるのですか?

 派遣労働者の受入に期限があることを知った服部社長と宮田部長。派遣契約をするにあたって、抵触日とその通知を派遣先から派遣会社(派遣元)へ行わなければならないことを学んだ。



宮田部長:
 派遣会社と相談した結果、派遣社員がうまく見つかった後は、どのようにすればよいのでしょうか?
大熊社労士:
 はい。派遣会社との間で労働者派遣に関する契約を締結します。一般的には、派遣社員に対する指揮命令など派遣条件に関する「労働者派遣基本契約」と、派遣を行なう毎に締結する「(個別)労働者派遣契約」の二重に締結するのが一般的です。
宮田部長宮田部長:
 派遣会社と契約をすることになった場合は、大熊先生に契約書を確認してもらいたいと思いますので、そのときはよろしくお願いします。なにぶん初めてのことですので。
大熊社労士:
 もちろん拝見させていただきます。遠慮なくご連絡ください。ところで、派遣会社と契約するためには、派遣先である御社から派遣期間の抵触日を派遣元に通知しなければなりませんので覚えておいてください。
服部社長:
 抵触日というのはなんでしょうか?
大熊社労士:
 派遣期間に制限のあることはお話しましたが、その制限に違反することとなる最初の日のことです。
服部社長:
 一般派遣業務の派遣期間は3年以内でしたよね。それが法律で明確に決められているのに、なぜそのようなことが必要なのでしょうか?
大熊社労士:
 派遣期間の制限は、派遣社員や派遣会社ごとに決められるのではなく、派遣先の「就業の場所ごとの同一業務」について決められるのです。
宮田部長:
 どういうことでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 派遣会社や派遣社員が変わっても、派遣先にとって継続して労働者派遣を受け入れる期間が対象となるからです。例えば、御社で印刷物の点検確認や梱包、仕分けの一連の業務に派遣を受け入れる期間を3年とします。ある派遣会社からAという派遣社員が派遣されていましたが、都合によりAからBに派遣社員が変わったとしましょう。その場合でも、派遣期間は当初のAが派遣され始めた日からとなります。派遣社員がBに変わったとしてもリセットされるわけではありません。
宮田部長:
 派遣会社はそれを知っていますよね。わざわざ抵触日を通知しなくてもよいのではないですか?
大熊社労士:
 派遣会社が同じならよいのですが、派遣会社が変わった場合や別の派遣会社から派遣社員が増員された場合などは、新しい派遣会社は抵触日がわかりませんので、派遣先である御社から派遣会社へ通知しなければならないのです。
服部社長服部社長:
 なるほど。派遣社員や派遣会社ごとに派遣期間が設けられるということになると、派遣社員や派遣会社を変えることで実質的には期間がないのと同じになることを防ぐためですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。なお、「就業の場所ごと」とは、場所的に他の部署と独立している課や部、事業所全体などをイメージしてもらえばよいでしょう。「同一の業務」とは、組織の最小単位で行われる業務とされています。例えば、業務の内容について指示を行う権限を有する係長とその係長の指揮を受けて業務を遂行する者とのまとまりです。仮に違う作業に変わった場合でも、それが同じ係や班の中の業務であれば、同一の業務とされます。あくまでも実態により判断されますので注意してください。


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[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。労働者派遣基本契約は、派遣会社が同一の派遣先に対して何度も派遣契約を締結することが予定されている場合などに締結するためのものです。(個別)労働者派遣契約は、労働者派遣法第26条に規定されている事項を契約書に反映させたものとなります。したがって、(個別)労働者派遣契約書は必ず必要となりますが、労働者派遣基本契約書は必要に応じて締結することとなります。また、派遣会社は、派遣先から派遣期間の制限に違反することになる最初の日となる抵触日について通知がないときは、労働者派遣契約の締結が禁止されています。この通知を受けないまま労働者派遣を締結した場合には労働者派遣法違反になりますが、民事上は有効です。また、派遣会社は、抵触日以降継続して労働者派遣を行うことが禁止されています。抵触日が近づくと、派遣会社は派遣社員や派遣先に派遣停止の事前通知を行います。


[関連法規]
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 第40条の2(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)
 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(次に掲げる業務を除く。第3項において同じ。)について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。



関連blog記事
2008年6月9日「派遣労働者の受入には期限があるのですか?」
https://roumu.com/archives/64910632.html
2008年6月2日「派遣と請負とは何が違うのですか?」
https://roumu.com/archives/64910574.html
2008年3月22日「派遣先事業主・派遣元事業主に課せられた労働法の適用(労働基準法編)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51285988.html
2008年03月17日「産業医選任義務の従業員数50名に派遣労働者は含めるのか」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51279846.html
2008年3月15日「派遣先責任者選任義務の範囲」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51278351.html
2007年10月20日「8年間で企業における派遣労働者の割合が倍増!」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51128275.html


参考リンク
厚生労働省「労働者派遣事業・職業紹介事業等」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai.html
東京労働局「労働者派遣事業関係」
http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/haken/conttop.html
Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog「労働者派遣関連書式」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/cat_50241670.html


(鷹取敏昭)


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