社員に新年から気持ち新たに仕事に取り組んでもらうためには
あけましておめでとうございます。本年も大熊ブログをよろしくお願いします。さて今回、大熊は大学時代のサークルの同級生で新年会を開き、久し振りにサークルでの親友である加山と再会しました。加山は現在、中堅製造業の人事課長をしているのですが、仕事の中で社員がどうすればやる気をもって働いてくれるのかに悩んでいるとの相談を受けました。
大熊社労士:
やあ、久しぶり、加山。
加山さん:
大熊!久し振り!前にあったのは青木の結婚式以来だからもう5年近くになるな。
大熊社労士:
そうか、もうそんなに経つのか。本当に時間が経つのは早いもんだ。そういえばこないだ電話でいろいろ積もる話があるようなことを言っていたけど、どうしたのか?
加山さん:
いやなぁ、世間では100年に一度の経済危機だなんて言われているけれども、うちの会社も例外ではなく、秋以降、受注量が30%くらい少なくなっているんだ。
大熊社労士:
加山の会社もそうかぁ。うちの顧問先でもやはりそんな話が多いよ。
加山さん:
やはり、どこもそうなんだな。その上、テレビをつければ、朝のワイドショーから派遣切りだの希望退職だのといった雇用危機のニュースばかりだろ。うちの社員も不安に思うんだろうな、なんとなく雰囲気が悪くてさ。うちの会社もコスト削減や賞与のカットなどはしているけれども、まだ雇用に手を付けるような段階ではないのでそんなに不安に思う必要はないはずなんだが、特に若手社員の士気が停滞しているような気がしているんだ。
大熊社労士:
そうだな、人事課長としては社員の士気が下がっている上体を放置はできないよな。それでなにか対策は考えてるの?
加山さん:
ちょうど年も変わることだし、ここで気持ちを新たにして、みんなで頑張ろう!という雰囲気にしたいと思ってるんだ。ただ人事としてどのような対応をすべきか、なかなか考えがまとまらなくてさ。相談に乗ってほしいんだ。
大熊社労士:
そういうことか。新年というタイミングを考えるとまずはトップにご活躍頂きたいところじゃないかな。仕事始めの日には全社員が集まる機会はない?
加山さん:
ああ、あるよ。うちの会社は12月がいつも忙しいんで、忘年会は行わず、仕事始めの日に新年会をするのが決まりなんだよ。
大熊社労士:
それはちょうどいい。であれば、その場で社長から会社の状況に関する説明をしてもらうことがまず大事じゃないかな。社員は正確な情報がない中で必要以上に不安に思っている可能性が高いと思う。だからまずは会社が置かれている状況、今後の見通し、会社としての対応の方針なんかを社長から話をしてもらうというのは重要だと思う。あと悪い話もこの場でしておくことがいいだろうな。例えば第一四半期は新規受注が見込めないので生産調整で一時帰休をする可能性があるというような話があるのであれば、それは会社と社員の雇用を守るためなので協力して欲しいということも話しておく必要があると思う。
加山さん:
確かにそうだよね。これまでは社員を不安にさせないようにマイナスの話はあまりして来てないけれども、明らかに生産量が減っているのが現場でも分かる訳だから、ここはしっかりと情報を伝え、危機感を共有した方がいいのかも知れない。
大熊社労士:
その上であとは各部門長が個別面談でフォローをするといい。新年会のあと、1週間くらいかけて個人面談をしてもらうんだ。社長の話で分からなかったことや不安に思うことがないかを確認した上で、社員から仕事に関する悩みや要望などを聞きだすといい。日ごろも上司と部下の間では会話があると思うけれども、そういうときにはどうしても目の前にある仕事のことを話してしまいがちになる。だから半年に1回くらいは少し改まった面談を行って、部下がどのようなことを考えているのか、将来どのような仕事をしたいのかといった内容について話してみてはどうだろう。
加山さん:
確かに。人事面談は賞与の評価フィードバックを兼ねて年2回行っているけれども、内容は現場任せになっているので、仕事の延長のような話が多いと思う。少なくとも将来どのようにしていきたいのかなど語ることはないだろうね。
大熊社労士:
もちろん、部下の話を聞くだけでなく、上司は自部門のことをどのように考えているのか、部下に対して期待する人材像を伝えることこそが大事なんだ。部下が会社の中でどのような仕事をすることができるのか、あるいは仕事をしていきたいのか、自分の姿を描きやすくするためには、上司としても会社としても伝えるべきことを伝えなれば、お互いの方向がズレてしまい、また部下が不安を感じることも少なくないように思う。
加山さん:
なるほど。部下に考えるように言っても、会社からも上司からも何も示されない中で、将来の姿を描くことは難しい。人事としては会社のビジョンや社員に対して期待する人材像を示して、それを部門長に具体化してもらうことが求められるね。それじゃあ、仕事始めの日には社長に新年会でのスピーチをお願いした上で、面談についても提案してみるよ。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。昨年は派遣切りを中心に非正規労働者の雇用問題が連日マスコミを賑わせました。この話題が選挙を睨んだ与野党の駆け引きの材料となり、更にはマスコミの報道姿勢も危機感を煽るようなものが多かったために、「次は我が身か」と不安に思う社員が増加しているように感じます。こういったマイナスの環境においては、平常時以上に会社から社員に対するメッセージを明確に伝えていかなければなりません。会社はいまどのような状況にあるのか、今後の見通しは、その中で当社はどのように課題に立ち向かっていこうとしているのかなどをトップから社員に説明し、共通の価値観や危機意識を共有することが求められます。
また同時に近年は、一人パソコン1台の環境となり、メールでのやりとりが多くなっていることから、顔をつき合わせてコミュニケーションをする機会が減っています。それにより、上司と部下との意思疎通が十分に行われなくなり、上司は部下が何を考えているのか分からず、また部下も会社の方向性が分からず不安に感じることも少なくないでしょう。そのため、上司と部下とがじっくり話をする機会を設けることが不可欠となっており、会社としては、会社のビジョンや社員に期待する人材像を示し、社員が夢を抱けるようにしていきたいものです。
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(福間みゆき)
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