来年の改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい

 服部印刷では、子育てをしながら働いている社員がいるが、その社員より短時間勤務制度を設けて欲しいといった要望が総務に寄せられた。そこで、宮田部長は社員の両立支援を図っていくために会社としてどのようにしていくことが求められているのか、大熊社労士に相談することにした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。今日は早速ですが、短時間勤務制度の相談をさせてください。
大熊社労士:
 短時間勤務制度と言いますと?育児の短時間勤務ですか?
宮田部長宮田部長:
 はい、そうです。当社には仕事と子育てを両立しながら勤務している社員が数名いるのですが、ある社員から短時間勤務制度を設けて欲しいといった要望が出ているのです。会社としても、長く働いてもらうために対応していきたいと考えていますが、現場サイドは勤務時間が短くなることで業務運営に問題が生じるのではないかと心配しており、検討が止まっている状況です。そこで大熊先生にご相談ですが、会社としてはどのようにしていくことが求められているのでしょうか。
大熊社労士:
 なるほど。ちょうどこの相談は、6月下旬に国会で可決・成立した育児介護休業法の改正と関連してきますね。
宮田部長:
 育児・介護休業法が改正されるのですか?
大熊社労士:
 はい。現段階では、施行日は正式には決まっておらず、来年の7月1日と言われています。また、具体的な取扱いについてもまだ分からない部分が多いのですが、今後、政令・省令が出てくれば、様々な行わなければならない事項が明確になってくるでしょう。ちなみに、御社のように常時100人以下の労働者を雇用する事業主については、一部の内容についてですが3年を超えない範囲で猶予が与えられることになっています。
福島照美福島さん:
 一部ということは、猶予を待たずに適用されるものがあるということですね。例えばどのようなものがありますか?
大熊社労士:
 いくつかありますが、主なものとしては次の2点です。
労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止
 現行制度において、労使協定を結ぶことによって育児休業の対象外にできる労働者がおり、その中に「配偶者が子を養育できる状態である労働者」があります。これについては、今後、この専業主婦の夫などを育児休業の対象外にできる旨の規定を廃止し、配偶者が子を養育できる場合であっても、育児休業の取得対象者となります。
子の看護休暇の拡充
 現行制度では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者については、1年に5日まで子の看護休暇を取得できるとされていますが、これが2人以上であれば10日まで取得できるようになります。
福島さん:
 ということは、今後、労使協定と育児介護休業規程を修正する必要があるということですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そのとおりです。法改正の具体的な内容が分かりましたら、またお伝えしますので、時期をみて規程等の整備を行いましょう。100人以下の事業所については3年を超えない範囲で猶予がありますが、法改正により短時間勤務制度の義務化や所定外労働の免除の義務化、介護休暇の新設などの対応が必要になりますので、会社としてどのように仕事と子育てや介護の両立を図っていくか、いまから検討しておくことが望まれます。
宮田部長:
 なるほど、そのような流れがあるのですね。社長にも伝えて、会社としての方針を出すようにします。
大熊社労士:
 併せて、短時間勤務制度の導入を促進するために助成金制度が充実されていますので、上手に活用されるのもよいですね。具体的には、中小企業子育て支援助成金や両立支援レベルアップ助成金があります。
宮田部長:
 ありがとうございました。また相談します。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は今後の育児介護休業法改正について取り上げてみましたが、併せて平成21年4月1日より改正された次世代育成支援法について確認しておきましょう。事業主は、従業員の仕事と子育ての支援をしていくための雇用環境の整備について計画を策定することになっており、それを「一般事業主行動計画」と呼んでいます。301人以上の労働者を雇用する事業主については、平成21年4月1日より、この計画を策定し都道府県労働局長への届出が義務化されました。また、平成21年4月1日以降に計画を策定・変更した場合は、その内容を会社のホームページなどで公表し、労働者への周知も必要となりました。平成23年4月1日以降については101人以上の労働者を雇用する事業主についても計画の策定および届出、公表、周知が義務づけられることになっています。そのため、会社においては早めに行動計画を立てて、目標に対してどのような対策を実施していくのかを検討しておきましょう。



関連blog記事
2009年6月29日「残業免除の義務化等を盛り込んだ育児介護休業法が成立」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51576520.html
2009年4月30日「国会に提出された所定外労働免除義務化を含む育児介護休業法改正案」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51542160.html
2009年4月17日「時間外労働の制限等の義務化が盛り込まれた育児介護休業法の法律案要綱」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51537400.html
2009年4月14日「[改正雇用保険法](8)休業中に全額支給となる育児休業給付」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51531353.html
2009年4月13日「産前産後休暇・育児休業等の取得に対する不利益取扱い禁止を確認した通達の発出」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51531582.html
2009年4月3日「基準適合一般事業主認定申請書(平成21年4月改訂版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55243810.html
2009年3月30日「一般事業主行動計画策定・変更届(平成21年4月1日改訂版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55242656.html
2009年3月23日「「くるみん」の認定マークを受けることは難しいのですか?」
https://roumu.com/archives/65068628.html
2009年3月16日「一般事業主行動計画の目標と対策はどのように設定すればよいのですか?」
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2009年3月9日「一般事業主行動計画はどのように作成するのですか?」
https://roumu.com/archives/65064532.html
2009年2月16日「従業員に育児休業をさせると会社が助成金をもらえるのですか」
https://roumu.com/archives/65055178.html


参考リンク
厚生労働省「育児介護休業法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html
厚生労働省「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/jisedai/
21世紀職業財団「両立支援のひろば」
http://www.ryouritsushien.jp/


(福間みゆき)


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