6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(4)

 前回の訪問時(2010年3月29日のブログ記事「6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(3)」参照)には、子の看護休暇が養育する子の人数によって日数が5日もしくは10日になること、介護休暇が新設されることを解説した。今回も引続き、大熊社労士は、今回の改正の目玉である子育て中の短時間勤務制度の義務化について解説するために、服部印刷を訪問した。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。実は現在、育児休業中の社員から保育所に入所できることになったので、7月から職場に復帰したいとの連絡がありました。当社でも初めて職場復帰者が出ることになりましたので、会社としてどのように対応したらよいのか教えてください。
大熊社労士:
 わかりました。まずは規程を確認しましょう。御社では勤務時間の短縮等の措置として、時差出勤制度を導入されていますので、3歳までは時差出勤をしながら仕事と育児を両立できるような制度になっています。
宮田部長:
 そうでしたか。
大熊社労士大熊社労士:
 法改正前の現在においては、会社は3歳に満たない子を養育する従業員について、以下の制度の中から一つを選択して制度を設けることが義務づけられています。これが6月30日の改正により常時使用する従業員が100人を超える企業については、の短時間勤務制度の導入が義務づけられることになっています。
短時間勤務制度
所定外労働免除制度
フレックスタイム制度
時差出勤の制度
事業所内保育施設の設置運営
福島さん:
 つまり、既に①の短時間勤務制度を採用している以外の企業においては今回、必ず短時間勤務制度を導入しなければならないということですね。
大熊社労士:
 そのとおりです。なお従業員数100人以下の企業の場合、しばらくの間はのいずれかの措置で問題ありませんが、将来的にはの短時間勤務制度を必ず導入しなければならないということとなります。ただし、短時間勤務制度の対象となるには、以下のすべてに該当している必要があります。
(1)3歳に満たない子を養育する労働者であること
(2)1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
(3)日々雇用される者でないこと
(4)短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
(5)労使協定により適用除外とされた労働者でないこと
宮田部長:
 この場合も労使協定で除外できるのですね。具体的には、どのような労働者を除外できるのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、この点については、当該事業主に引続き雇用された期間が1年に満たない労働者と1週間の所定労働日数が2日以下の労働者が適用除外となります。この他にも、業務の性質または業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者も対象外とすることができます。
福島さん:
 業務の性質または業務の実施体制に照らしてというのは具体的にどのような場合を指すのでしょうか?
大熊社労士:
 これについては指針が出されており、例えば、国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務や労働者が少ない事業所において当該業務に従事しうる労働者が著しく少ない業務、流れ作業方式による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務などが挙げられています。ただし、これらはあくまで例示に過ぎないため、指針に示されていないものであっても困難と認められる場合があり、逆に例示に該当する場合であっても困難と認められない場合がありますので、注意が必要となります。
宮田部長:
 なるほど、あくまで実態をみて本当に短時間勤務を認めることが困難であるか否かを判断する必要があるのですね。もしも労使協定で上記について定める場合は、どのような点に注意が必要なのでしょうか?
大熊社労士:
 具体的にどのような業務、職種に就く者が短時間勤務制度の適用対象外となるのか、従業員の誰が見ても分かるように規定しておく必要があります。客観的にみて短時間勤務制度の対象とすることが困難と認められない業務については、適用除外となりませんので、業務を細かく検討していくことが求められますね。
福島照美福島さん:
 労使協定を締結した後に、各従業員が短時間勤務の対象であるか否かが分かるように、説明をしておくことが重要ですね。
大熊社労士:
 そのとおりですね。労使協定は締結して終わりではなく、その内容についても周知しておく必要があります。特に上記の点については、従業員が従事する業務によって短時間勤務制度の対象となるか否かが異なるため、説明会を行うなどしておくことが望まれます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は短時間勤務制度の義務化について取り上げましたが、ここでは労使協定により短時間勤務制度の適用対象外とされた業務に就く者に対して必要な措置について補足しておきましょう。この場合、短時間勤務をすることができないことの代替措置として、会社は始業時刻変更等の措置を講じなければならず、具体的には次のいずれかの措置を講じる必要があります。
①フレックスタイムの制度
②始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤の制度)
③労働者の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与


 また、短時間勤務制度の適用除外とされた従業員が短時間勤務を希望しており、他の業務に配置転換することにより短時間勤務制度が可能である場合については、本人の合意を得た上で配置転換を行い、短時間勤務をさせることが可能です。ただし、この場合については短時間勤務が終了した後の配置等について、事前に話し合いを行い合意を得ておくことが望まれており、こうすることによってトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。


[関連告示]
子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)
第2 事業主が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項
2 法第16条の2の規定による子の看護休暇及び法第16条の5の規定による介護休暇に関する事項
(3) 労働者の子の症状、要介護状態にある対象家族の介護の状況、労働者の勤務の状況等が様々であることに対応し、時間単位又は半日単位での休暇の取得を認めること等制度の弾力的な利用が可能となるように配慮するものとすること。



関連blog記事
2010年3月29日「6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(3)」
https://roumu.com/archives/65241319.html
2010年3月1日「6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(2)」
https://roumu.com/archives/65220912.html
2010年2月1日「平成22年6月30日に施行される改正育児介護休業法のポイントを教えて下さい(1)」
https://roumu.com/archives/65199603.html
2010年3月18日「4月1日に施行される育児・介護休業法に基づく紛争解決制度」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51708408.html
2010年3月8日「4月14日に名古屋で改正育児・介護休業法対策セミナーを開催」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51706017.html
2010年3月5日「厚生労働省から「改正育児・介護休業法に関するQ&A」が公開」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51703762.html
2010年2月19日「改正法対応の育児・介護休業規程 ダウンロードを開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51698802.html
2010年2月5日「厚生労働省より公開された改正育児・介護休業等に関する規則の規定例」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51692789.html
2010年1月31日「厚労省担当課長の談話に見る改正育児・介護休業法の背景・目的」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51690787.html
2010年1月22日「「[新改正育児介護休業法]所定外労働の免除の義務化が除外できるケースと注意点(2)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51686226.html
2010年1月18日「[新改正育児介護休業法]1歳までの再度の育児休業申し出(1)
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51683890.html


参考リンク
厚生労働省「育児介護休業法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html
21世紀職業財団「両立支援のひろば」
http://www.ryouritsushien.jp/


(福間みゆき)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。