パートタイマーにも年次有給休暇を与えなければならないのですか?

 ここのところ、年次有給休暇(以下、「年休」という)の情報収集を行っている宮田部長。今日は大熊社労士にパートタイマーへの年休の比例付与について質問することとした。



宮田部長:
 いやぁ、大熊先生。今日も寒いですねぇ。
大熊社労士:
 本当に寒いですね。こんなときは暖かいコーヒーが嬉しいですね。早速いただきます。
宮田部長宮田部長:
 どうぞどうぞ。大熊先生には先日から年休に関する相談をさせて頂いていますが、今日はパートタイマーの年休について聞いておきたいのです。
大熊社労士:
 わかりました。多くの中小企業の実態を見ると、パートタイマーには年休を与える必要がないと勘違いしている方が少なくないように思います。
宮田部長:
 そうですねぇ(苦笑)。私の記憶でもパートタイマーには年休を与える必要はなかったような気がするのですが…。
大熊社労士:
 はい。以前は確かにそうでしたね。以前といってもかなり昔の話になりますが、昭和63年以前は年次有給休暇の規定は週所定労働日数が5日以上の労働者に適用されると解されていたため、週4日以下の労働者に対して年次有給休暇を付与する義務はないとされていました。あれから20年以上経過しましたが、まだまだパートタイマーに年休を与えていない企業も相当数あるのが実態ではないかと
宮田部長:
 そうだったんですね。昭和63年の改正を経て、現在はどのような取扱になっているのですか?
大熊社労士:
 はい。現在は比例付与といって、パートタイマーの所定労働時間や所定労働日数によって、フルタイムの労働者よりは少ない日数が付与されることになっています。
宮田部長:
 付与される条件は正社員と同じなのですか?
大熊社労士:
 ええ、正社員と同じように一定期間の継続勤務(入社から6ヶ月、その後1年ごとの期間)、各期間の全労働日の8割以上の出勤が年休付与の要件であることに違いはありません。
宮田部長:
 なるほど、所定労働時間によって少ない日数が付与されるとおっしゃいましたが、所定労働時間については、どうなっているのでしょうか?正社員だと通常週の所定労働時間は40時間なので、それよりも少なければそれに応じて年休の付与日数も減っていくのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 週の所定労働時間については基準は1つひとつだけです。まずは週の所定労働時間が30時間以上か30時間未満かだけで判断します。もしもパートタイマーと呼ばれていても週の所定労働時間が30時間以上であれば、正社員と同じように年休を付与する必要があります。
宮田部長:
 なるほど気をつけないといけませんね。週の所定労働時間が30時間未満の場合は、所定労働日数によって付与日数が変わってくるということですか。
大熊社労士:
 おっしゃるとおりです。所定労働日数は、週によって所定労働日数が定められているか、週以外の期間によって所定労働日数が定められているかによってこの表の日数が付与されることになります。
比例付与
宮田部長:
 なるほど、結構細かく定められているんですね。これを見ながら間違えないように付与していかなければなりませんね。
大熊社労士:
 あと先日の定年退職者の年休のところでも少しお話しましたが、2ヶ月や3ヶ月契約のパートタイマーでも雇用契約を更新した場合は、実質的に労働契約が継続している限り勤務年数を通算しなければならないことも忘れないでくださいね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス 
こんにちは、大熊です。実務上パートタイマーの週所定労働日数が年度の途中で変更となることもあると思いますが、そのようなケースについてもお伝えしておきましょう。行政通達によりますと、「法第39条第3項の適用を受ける労働者が、年度の途中で所定労働日数が変更された場合、休暇は基準日において発生するので、初めの日数のままと考える」(昭和63年3月14日 基発150号)とされていますので、次の基準日までは付与日数の見直しはする必要がない。つまり、基準日時点での所定労働日数によって付与日数が決まります。ご注意ください。


[関連法規]
労働基準法 第39条第1項(年次有給休暇)
 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。


労働基準法 第39条第3項
 次に掲げる労働者(1週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前2項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の1週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第1号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の1週間の所定労働日数又は1週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
1.1週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
2.週以外の期間によつて所定労働日数が、定められている労働者については、1年間の所定労働日数が前号の厚生労働省令で定める日数に1日を加えた日数を1週間の所定労働日数とする労働者の1年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者


労働基準法施行規則 第24条の3
 法第三十九条第三項 の厚生労働省令で定める時間は、三十時間とする。
2 法第三十九条第三項 の通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数は、五・二日とする。
3 法第三十九条第三項 の通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数は、同項第一号 に掲げる労働者にあっては次の表の上欄の週所定労働日数の区分に応じ、同項第二号 に掲げる労働者にあつては同表の中欄の一年間の所定労働日数の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分ごとに定める日数とする。
※表は省略
4 法第三十九条第三項第一号 の厚生労働省令で定める日数は、四日とする。
5 法第三十九条第三項第二号 の厚生労働省令で定める日数は、二百十六日とする。


[関連通達]
昭和63年3月14日 基発150号
 継続勤務とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する。
ハ 臨時工が一定月ごとに雇用契約を更新され、6箇月以上に及んでいる場合であって、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合。



関連blog記事
2011年1月10日「定年退職者の年次有給休暇の取扱いについて教えてください」
https://roumu.com/archives/65441641.html
2011年1月3日「当日の朝に申請された年次有給休暇は認めなければなりませんか?」
https://roumu.com/archives/65440983.html
2009年7月20日「年次有給休暇の出勤率はどのように計算すればよいのですか」
https://roumu.com/archives/65119248.html


(中島敏雄)


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