4月1日から対象が拡大される一般事業主行動計画策定義務の具体的な内容を教えてください

 2011年4月1日から一般事業主行動計画の策定等の義務が従業員数101人以上の企業に拡大されるにあたって、宮田部長は大熊社労士に具体的な取組についての相談をしていた。



宮田部長:
 4月から一般事業主行動計画の策定等などの義務が従業員数101人以上の企業に拡大されるそうですね。
大熊社労士:
 ええ、そのとおりです。確か御社では既に取り組みを始めていらっしゃいましたよね?
宮田部長:
 ええ、取り組みを始めてはいるのですが、具体的にどんな取り組みを行っていけば良いのか悩んでいます。
大熊社労士:
 なるほど、わかりました。それではまずは一般事業主行動計画の基本的な部分をおさらいしておきましょう。福島さんに質問です。そもそも一般事業主行動計画とはどういったものでしょうか?
福島照美福島さん:
 はい、少子化が深刻な社会問題となっていることから、次世代育成支援対策推進法は企業に対し、仕事と子育ての両立を図るために必要な雇用環境の整備を義務付けています。この義務を達成するために企業には、この計画を策定し・届出、公表・周知することが義務付けられています。従来は従業員数301人以上の企業へ義務付けられていましたが、2011年4月より101人以上の企業にも義務付けが拡大されることになっています。
宮田部長:
 さすが福島さん。よく勉強しているね!上司として鼻が高いよ(笑)。
大熊社労士:
 そのとおりです。行動計画を策定の段階では、具体的には3つのステップを踏みます。1.自社の方針を明確にする。2.自社の現状・従業員のニーズを把握する。3.行動計画を策定するとありますが、まず最初にそもそも他社がどういった取組を行っているかは気になるところですし、できれば参考にしたいですよね?
宮田部長:
 気になります。同業者の集まりで聞くことくらいしか他社の取り組みを知ることはできませんからね。何か他に他社の取り組みを知る方法があるのですか?
大熊社労士:
 はい、それができるサイトが「両立支援のひろば」です。
宮田部長:
 そんなサイトがあるんですね。詳しく聞かせてください。
大熊社労士:
 両立支援のひろばは、仕事と家庭の両立支援に関する企業の取組事例を紹介しているサイトですが、2010年2月6日現在では、10,272社の取り組み事例が登録されており、これを見ることができます。
宮田部長:
 それはすごい数ですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。またこのサイトには検索機能がついています。例えば企業規模、業種、都道府県などの条件を選んで検索することができるので、自社と同じような規模の同業種の企業がどのような取り組みを行っているかを知ることができます。自社に合った現実的な取り組みを考える上では非常に参考となると思いますよ。
宮田部長:
 おっ、当社のライバル企業の計画もありましたよ。この内容だったら当社の方が魅力的ですな(笑)。
大熊社労士:
 そうですね。御社は既に取り組みを始めていらっしゃるので「くるみんマーク認定」や「ファミリーフレンドリー企業表彰」を受けている企業を参考にしてみるのも良いと思いますよ。
宮田部長:
 「認定」や「表彰」ですか。しかし、当社のような規模の企業では認定を受けるのは難しいのではないでしょうか?
大熊社労士:
 いいえ、そうでもありません。両立支援のひろばからリンクされている、全国中小企業団体中央会の「認定企業事例集」を見てみるとと、秋田県の従業員数30名の製造業や大阪府の従業員数14名のサービス業、島根県の22名の塗装業など、御社よりも従業員数の少ない企業も認定を受けているようですよ。
宮田部長:
 それはすごいですね。認定なんて、大企業のものだと思い込んでいました。でも認定を受けるためには、やはりすごい取組をしているんじゃないですか?
大熊社労士:
 いえいえ、そんなお金や手間をかけてというものでもないですよ。秋田県の従業員数30名の企業の取り組みは、育児休業取得率の目標を男性20%、女性100%としたり、年次有給休暇の取得率を60%とするといった内容になっています。
宮田部長:
 そうですか、我々が取組めないほどのすごい目標と言うわけでもなさそうですね。
大熊社労士:
 はい。その取組の結果、出産や育児を理由に退職する社員がいなくなったために、人材募集のコストや新人をイチから教育するコストが不要になったり、パートタイマーの募集では、応募数が増えて優秀な人材を確保できるようになったという効果があったそうです。
宮田部長:
 でも、男性の育児休業取得はなかなか難しいんじゃないですか?
大熊社労士:
 男性の育児休業取得者については、紹介されているケースによると1年間というわけではなく、5日間から20日間という期間で実施しているそうです。休業取得者本人は会社や同僚への感謝から復帰後は非常に頑張ってくれるし、周りの同僚も同僚が休んだときのためにレベルアップしておかなければならないと、いろいろな仕事ができる多能職への努力をするようになったそうです。
宮田部長宮田部長:
 なるほど、5日程度でしたら既存社員のカバーでなんとか業務は回せそうですね。また、当社の勤勉な従業員であれば、確かに彼等のニーズにあった法律を上回る制度を整備することで、会社や同僚に感謝して、いま以上に頑張ってくれる気がします。
大熊社労士:
 そうですね。現在の「イクメン」と言う言葉に代表されるように、男性の育児に参加したいと言うニーズは徐々に高まりつつありますので、若い労働力を確保するためにも今後ますます両立支援は重要な施策になっていくと思いますよ。
宮田部長:
 なるほど、コストをかけなくても工夫次第で効果をあげることはできるし、新たな人材採用の面でも今後もっと真剣に取組んでいかなければならない分野ということですね。従業員の声も聞いて次回の行動計画策定の際には参考にしてみます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス 
こんにちは、大熊です。以下では次世代認定マークについて説明しておきましょう。このマークは、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けていることを証明する次世代認定マーク(愛称:くるみん)と呼ばれるもので、広告、商品、求人広告などに表示することによって、子育てサポート企業であることを内外にアピールすることができるというものです。この認定を受けるためには、行動計画の計画期間が終了し、以下の9項目をすべて満たすことが必要です。
(1)雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な一般事業主行動計画を策定したこと。
(2)一般事業主行動計画の計画期間が、2年以上5年以下であること。
(3)策定した一般事業主行動計画を実施し、それに定めた目標を達成したこと。
(4)平成21年4月1日以降に新たに策定・変更した一般事業主行動計画について、公表及び労働者への通知を適切におこなっていること。
(5)計画期間内に、男性の育児休業者等取得者が1人以上いること。
(6)計画期間内に、女性の育児休業等取得率が70%以上であること。
(7)3歳から小学校に入学するまでの子を持つ労働者を対象とする「育児休業の制度または勤務時間の短縮等の措置に準ずる措置」を講じていること。
(8)次の①から③までのいずれかを実施していること。
①所定外労働の削減のための措置
②年次有給休暇の所得の促進のための措置
③その他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
(9)法及び法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと。
 認定を受けるためには行動計画の策定段階からこれらの基準を踏まえることが求められます。



関連blog記事
2009年3月23日「「くるみん」の認定マークを受けるのは難しいのですか?」
https://roumu.com/archives/65068628.html
2009年3月16日「一般事業主行動計画の目標と対策はどのように設定すればよいのですか?」
https://roumu.com/archives/65066862.html
2009年3月9日「一般事業主行動計画はどのように作成するのですか?」
https://roumu.com/archives/65064532.html
2009年2月16日「従業員に育児休業をさせると会社が助成金をもらえるのですか」
https://roumu.com/archives/65055178.html
2008年3月5日「育児休業の取得促進に関する助成金制度」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51269983.html
2008年9月8日「一般事業主行動計画(2回目以降、取組推進版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55130879.html
2008年9月5日「一般事業主行動計画(育成支援地域密着版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55130872.html
2008年9月3日「一般事業主行動計画(多様な雇用環境整備版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55127939.html
2008年9月1日「一般事業主行動計画(初回作成・認定版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55127928.html


参考リンク
両立支援のひろば
http://www.ryouritsushien.jp/
全国中小企業団体中央会「子育て支援認定中小企業事例」
http://www2.chuokai.or.jp/hotinfo/200803kosodate_03.pdf


(中島敏雄)


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