社労士に電子申請を依頼すると会社の手続きも楽になるのですね

 社会保険の手続きを電子申請でできないかと検討し始めた福島さんであったが、電子証明書取得の手続きに手間がかかりそうだということ(2011年12月12日のブログ記事「電子申請をする際の電子証明書はどのように取得すればいいのでしょうか?」参照)で、社会保険労務士が手続きを代行する際の方法について確認することとした。


大熊社労士:
 福島さん、こんにちは。今日も電子申請の手続きのことについてお話するのでしたよね。
福島照美福島さん:
 はい、前回お話を伺った限り、電子署名の取得は手間がかかりそうでしたね。ただ、社会保険労務士が事業主に代わって書類を電子申請で行うときは、事業主の電子署名は不要という話もあったかと思うのですが?
大熊社労士:
 そうですね、事業主が電子署名を取得することが、電子申請利用促進の妨げになっていると考えられており、以前、改正が行われたという経緯があります。どのように変わったかというと、社労士が事業主の代わりに社会保険手続きを電子申請で行う場合には、事業主の提出代行者であることを証明するものを届出と併せて送信することで、事業主の電子署名に代替できることとなったのです。
宮田部長宮田部長:
 へぇ、そうなんですね。それで、その「事業主の提出代行者であることを証明するもの」とは一体どんなものなのですか?
大熊社労士:
 はい、「提出代行に関する証明書(継続委託用)」(以下、「証明書」という)というものです。具体的な書式は、こちらのブログにもありますが、提出代行を行う社労士事務所名等を記載した上で、事業主が押印することになります。
服部社長:
 この文面を見ると、「労働社会保険諸法令に基づく申請書等の提出代行事務を委託」と書いてあるので、これ1枚ですべての届出が問題なく処理できるということですよね?
大熊社労士:
 そうですね。手続きの度に何らかの書面に押印いただくわけではなく、この書類に1回押印いただけば、基本的にずっと利用できます。ちなみに、1回のみ(期間を定めて)代行するという場合には、「提出代行に関する証明書(個別委託用)」という別の書類があります。この場合には、委託する申請書等の名称と委託期間を記入し、その時にのみ利用できるようになります。
福島さん:
 通常の届出書類には、事業主の記名・押印が必要なのに、電子申請に関しては1回証明書を作成するのみというのであればとても便利ですね。
大熊社労士:
 これにより、電子申請の利用は増えたのではないかと思っています。ただし、すべての届出でこの事業主の電子署名の省略ができるわけではなく、こちらの一覧(平成23年11月28日現在)にある届出が省略できるものとなります。離職票の手続きもできるようになり、主要手続きは網羅されていると思うので、これだけあれば十分かと思うのですけどね。
福島さん:
 確かにそうですね。実は大熊先生に詳細を伺うまでは、いまの紙媒体での届出と同じようにすべての届出書や書類のようなものに事業主の押印が必要かと思ったので、郵送のやりとりがあったりで、それも大変なんだろうなと思っていましたが、これであれば確かにかなり手軽になりますね。
大熊社労士:
 そうですね。ちなみに、その後の流れを少し説明しておきますと、私の方では、事業所の方から手続きのご連絡をいただいた社員の方の電子申請を行うのですが、その際に証明書をPDFファイルにして添付することになります。この証明書が有効だという証明として、証明書の下部に私の印鑑も押すことになるんですけどね。
宮田部長:
 へぇ、先生の事務所ではこの用紙をPDFにできるんですね。
福島さん:
 宮田部長、うちの会社のコピー機も複合機ですから、このような紙を読み込んでPDFにできるんですよ。いまでは世間で相当利用されているんですからね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。そういえば、最近は福島さんとのやり取りもFAXはほとんどなくなり、便利になりましたね。ちなみに、添付するPDFは印影が赤色ではなく、白黒でも問題ないとされていますよ。私の方でも一度、この証明書をいただくことで、継続的に電子申請で手続きができますので、利便性は上がりましたね。
福島さん:
 ちなみに手続きが終了した後はどのような流れになるのですか?
大熊社労士:
 そういえば、その話を飛ばしていましたね。手続きが完了したものに関しては、私の方に通知されます。その通知と一緒に公文書が発行されますので、それを事業所にお渡しすることになります。いま、実際にやっているお客様については、印刷をして郵送することもあれば、PDFファイルでそのままお送りすることもありますよ。
福島さん:
 なるほど。イメージとしては、ハローワークで手続きした後にもらえる書類がPDFとして、先生の元に送られてくるということですね。
大熊社労士:
 そうですね。PDFであれば、すぐにお送りできますし、ファイルとしての保管もできますので、整理して管理すると効率化できるかと思います。服部社長服部社長:
 大熊さん、ありがとうございます。社労士の方にお願いすると便利だということがよくわかりました。いままで福島さんに頑張ってもらってきたけど、大熊さんにお願いすることを検討してもいい時期になったのかもしれないですね。宮田部長、一度、検討してみてくださいよ。
宮田部長:
 はい、承知しました。
服部社長:
 大熊さん、お願いするかもしれませんが、その時はどうぞよろしくお願いします。
大熊社労士:
 いつでもご相談くださいね。

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。この事業主の電子署名省略の取扱いは電子申請の利用を促進するために3年半ほど前に導入されたものです。社会保険関係の手続きはその申請件数も多く、このような制度により一定の利用促進になったと思われます。ちなみに添付するものについては、提出代行に関する証明書のみではなく、社労士への委任状、契約書等、名称に関わらず、事業主が自らの申請書等の提出に関する手続きを自らに代わって社労士に行わせるこことが明らかなものであればいいとされています。離職票が電子申請でできるようになり、今後、電子申請手続きはさらに利用促進されると思われますので、社労士への代行依頼も含め、一度、検討しておきたい事項です。

 なお、名南経営および日本人事労務コンサルタントグループでは、来年の2月から3月にかけ、社労士事務所のための電子申請セミナーを東京・大阪・福岡で開催します。これから電子申請を始めようとされる社労士事務所の方、もしくは電子申請の利用をさらに進めようとする社労士事務所の方はぜひ、ご参加ください。
第1部(初級編)
これから電子申請を始める社労士事務所のための電子申請【超基礎】講座
第2部(応用編)
社労士業務の生産性を向上させる電子申請の上手な活用法と離職票の実務対
http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1202denshi.html


関連blog記事
2011年12月12日「電子申請をする際の電子証明書はどのように取得すればいいのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/65532078.html
2011年12月5日「離職票の電子申請がスタートしたと聞きました」
https://roumu.com/archives/65530652.html
2011年11月29日「離職票の電子申請スタートに伴い、電子化された雇用保険の各種返戻書類」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51892783.html
2011年11月22日「電子申請で離職票手続きを行なう際の離職者本人の署名取扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51890538.html
2011年11月14日「電子申請で手続きを行なった離職票手続きは電子公文書による発行に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51888262.html
2011年10月17日「11月28日から予定される離職票の電子申請交付とその申請方法」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51880942.html
2011年9月20日「ネットから印刷して利用できるようになった雇用保険の帳票類」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51874539.html
2011年9月7日「提出代行に関する証明書(継続委託用)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55484785.html
2011年6月29日「離職票発行の電子申請は平成23年11月28日から受付開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51856892.html

参考リンク
全国社会保険労務士会連合会「事業主の電子署名等に代わる取扱いについて」
http://www.shakaihokenroumushi.jp/social/application/index02.html

(宮武貴美)

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