出産のために会社を休んだときにもらえる手当について教えてください
福島さんの出産を機に出産・育児に関する社会保険手続きを説明することになった大熊。今日は出産手当金をテーマに服部印刷に訪問した。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。年が明け、気持ち的にバタバタしましたが、何とか落ち着きました。そこで福島さんにも連絡を取り、前回教えていただいた出産育児一時金は直接支払制度を利用したと聞きました。出産費用として42万円以上かかったみたいですので、差額の申請も特になさそうです。
大熊社労士:
そうでしたか。それにしてもやはり、出産には費用がかかりますね。
宮田部長:
本当ですね。たぶん、福島さんの子どもに会ったら、おじいちゃんのような気持ちになって、お祝いをたくさん包んじゃいそうですよ。
大熊社労士:
あはは。確かに福島さんは宮田部長のお子さんのような感じの年齢ですよね。しかも、しっかりした娘さんという感じですね。さて、今日は、出産手当金の話をするんでしたよね。
宮田部長:
はい、よろしくお願いします。
大熊社労士:
まず、出産手当金が支給される目的ですが、労働基準法では出産前後の女性労働者について、一定期間の就業を禁止しています。これが産前産後休暇ですね。産前産後休暇については、ノーワークノーペイの原則に従って、賃金を支払わないということで問題ありません。
宮田部長:
確かにこれまでも欠勤として扱ってきていたはずです。
大熊社労士:
そうですね。したがって、その生活費の補てんのために、労働基準法に定める産前産後休暇の間に健康保険から手当金を支給するということになっています。
宮田部長:
なるほど。確かに当社も産前産後休暇は無給なので、これから色々とお金がかかるのに給料を始め、何も所得がないとなると大変ですよね。
大熊社労士:
そうですね。この目的を達成するために、健康保険からは標準報酬月額の3分の2という金額の手当金が支給されます。ちなみに、出産育児一時金は被保険者・被扶養者ともに支給されますが、この出産手当金はあくまでも被保険者だけの給付ですので間違えないようにしてくださいね。
服部社長:
生活費の補てんという観点から被保険者のみに対する給付なのですね。
大熊社労士:
はい、おっしゃる通りです。生活費の補てんですので、産前産後休暇中に賃金が払われるような場合には支給されないことになります。これは以前お話をした傷病手当金と同じ取扱いですね。そしてもう一つ、あくまでも労働基準法の産前産後休暇に対しての給付ですので、産前休暇を前倒しし、法律を上回るような期間について休暇を認めているような場合であっても、あくまでも法律の産前産後休暇に対してのみ支給されることになっています。ただし、一部、例外的な取扱いがありますので、これは後ほどお話しましょう。
宮田部長:
よろしくお願いします。
大熊社労士:
出産手当金なのですが、傷病手当金と同じく1日につき標準報酬日額の3分の2相当額が支給されることになります。具体的な額の計算については以前やりましたね。
関連blog記事:2012年10月29日00:00 傷病手当金はいくらもらえるのですか?
https://roumu.com/archives/65583738.html
宮田部長:
暦日でもらえるというものですね。ところで福島さんの場合、実際に赤ちゃんが生まれた日が、出産予定日より遅かったようなのですが、一体、いつからいつまでもらえるものですか?
大熊社労士:
よい質問ですね。出産手当金は、出産日以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で会社を休んだ期間について支給されます。ただし、休んだ期間で、出産手当金の額より多い賃金が支給される場合には、支給されないことになります。
宮田部長:
ん?出産日以前?
大熊社労士:
はい、出産日は産前休暇に含まれるとされていますので、こういう表現になりますね。それで福島さんの場合なのですが、出産予定日より遅れて出産した場合には支給期間が、出産予定日から実際に出産した日までの期間についても産前休暇と同様に支給されることになります。たとえば、実際の出産が予定より4日遅れたという場合は、その4日分についても出産手当金が支給されることになっています。
宮田部長:
なるほど!福島さんの赤ちゃんは10日遅れて生まれたみたいなので、両親思いとも言えるかもしれませんね。
大熊社労士:
確かに(笑)。ちなみに、出産予定日よりも早く生まれてきた場合には、出産日以前42日となります。つまり、当初の産前休暇よりも前の日についても、支給対象の日となります。
服部社長:
それが先ほど大熊さんがおっしゃった一部例外ですね。
大熊社労士:
はいそうです。98日間(多胎妊娠の場合は154日間)はいずれも支給対象期間になるということですね。ただ、産前休暇ギリギリま
で働き、賃金を受けている場合で、出産予定日より早く出産したということになれば、賃金が支払われているということで、一部支給停止となることもあるかもしれませんね。
服部社長:
確かにそうですね。
大熊社労士:
さて、これが出産手当金の内容になります。通常ですと、産後休暇が終了してから請求するので、福島さんについても書類の準備をしてくださいね。
宮田部長:
了解しました!
大熊社労士:
福島さんですので心配はないかとは思いますが、申請書には「医師または助産師の意見を記入するところ」というのがあり、証明をもらう必要がありますので案内をしておいてくださいね。
宮田部長:
早速手配します!
大熊社労士:
それでは、次回は育児休業ことについてお話しましょう。
服部社長:
ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は出産手当金のことについてお話しました。この出産手当金ですが、任意継続被保険者については支給されないことになっています。ただし、退職等で被保険者資格を喪失した場合には、次の(1)から(3)のすべての条件を満たすと、出産手当金を受けることができます。
(1)退職日までに、1年以上継続して被保険者であること(任意継続加入期間を除く)
(2)退職日に仕事を休んでいること
(3)出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日) ・出産が予定日よりも遅れたときは出産予定日以前42日から出産日後56日の期間中に退職していること
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2012年10月29日「傷病手当金はいくらもらえるのですか?」
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2012年10月22日「傷病手当金はどのような場合に、どれくらいの期間支給されるのですか?」
https://roumu.com/archives/65581926.html
2012年10月15日「協会けんぽから受けることのできる出産にかかる給付について教えてください」
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(宮武貴美)
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