離職票を受け取った従業員のハローワークでの手続き(4)病気や定年で受給期間を延長するには

 定年や継続雇用後の失業手当(基本手当等)の受給に関することは、本当によく受ける質問だなぁと感じながら、大熊は服部印刷に向かった。
過去3回の記事はこちら
2013年6月10日「離職票を受け取った従業員のハローワークでの手続き(3)認定日と失業認定申告書とは」
https://roumu.com/archives/65614341.html
2013年6月3日「離職票を受け取った従業員のハローワークでの手続き(2)待期と給付制限」
https://roumu.com/archives/65613496.html
2013年5月27日「離職票を受け取った従業員のハローワークでの手続き(1)離職理由の確認」
https://roumu.com/archives/65613436.html


宮田部長:
 大熊先生、今日は先日の続きで、失業手当を受けるときにできる受給期間の延長についてお聞きするのでしたよね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうでしたね。私の経験から行くと、私傷病で退職せざるを得ない人や定年退職の人に失業手当はどうしたらよいのか?と尋ねられることが多いですね。
宮田部長:
 どうしてその人たちは大熊先生に質問するのですか?
大熊社労士:
 一番最初にお話しした通り、失業手当をもらうためには、「働く意思と能力」がなければなりません。病気の場合は意思はあっても働くことができなかったり、定年退職した人は「働くにしても少しのんびりしたい」なんて人がいらっしゃったりするので、働く能力があっても意思がないなんてことになるんですよ。
宮田部長:
 なるほど。となると、そういう人たちは失業手当がもらえないということになってしまうのですか?
大熊社労士:
 はい、適正な手続きをしないとそうなる可能性さえあります。というのも、失業手当は、原則として離職日の翌日から1年間で貰い切る必要があります。ですので、病気の治療に専念している間に1年が経過してしまったということもあり得るのです。
宮田部長:
 なるほど。そうなると、早く治療をしてもらわなくっちゃ…って、どうしようもない場合もありますよね。
大熊社労士:
 そうですね。ですので、受給期間の延長手続きがあるのです。具体的には離職日の翌日から1年間に、病気、けが、妊娠、出産、育児(3歳未満の子)等の一定の理由で引き続き30日以上職業に就くことができない期間がある場合には、その職業に就くことができない日数を受給期間に加えることができる、つまり、延長することができるのです。
宮田部長宮田部長:
 ということは、例えば病気で労務不能、3ヶ月の療養が必要となった場合には、1年3ヶ月まで伸びるということなんですね。こりゃ、安心の制度ですね。
大熊社労士:
 確かにそうですね。ただし、受給期間が延長できる期間は原則として最大3年間になっています。つまり、どれだけ延長しても失業手当は4年以内に貰い切らなくてはならないということになります。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士:
 それに加え、この延長には事前の手続きが必要であることにも留意する必要があります。
宮田部長:
 事前の手続き?
大熊社労士:
 この受給期間の延長は自動的に行われるものではなく、引き続き30日以上働くことができなくなった日の翌日から1ヶ月以内にハローワークで手続きをしなければならないのです。
宮田部長:
 なるほど…、ん?でも、病気で本人が行くことができないってケースもあるじゃないですか。
大熊社労士:
 鋭い質問ですね。手続きには、受給延長申請書、雇用保険受給資格者証、延長理由に該当することの事実を確認できる書類を持参することになっていますが、これらの手続きは郵送や代理人による提出も認められています。あ、代理人の場合には、委任状が必要ですけどね。
宮田部長:
 それであれば安心ですね。ところで、定年の話がどこかに行ってしまっていませんか?
大熊社労士:
 後回しにしていてすみません。宮田部長も興味がある内容でしたよね。
宮田部長:
 はい、まだまだ元気で働こうと思っていますが、一応、聞いておかないとと思いまして。
大熊社労士:
 60歳以上の定年退職者や定年後の継続雇用の終了により退職した人は、少しのんびりしたいという理由などから、退職後一定期間、求職の申し込みをしないことが考えられます。このような場合にも、やはりハローワークに申し出ることで、申し出た期間を延長することができることになっています。
宮田部長:
 へぇ!そうなんですね。じゃ、3年くらいゆっくりしてから、失業手当をもらうことも考えられるのですね。
大熊社労士:
 いやいや、そこが少し異なるのですよ。このケースでは、延長できる期間は最大1年間となっているため、2年以内に貰い切る必要があります。3年のんびりしていると、いつの間にかもらえない状態になっていたなんてことになるので気を付けてくださいね。
宮田部長:
 聞いていてよかった~、のんびりしすぎるところでした(笑)。
大熊社
労士:

 なお、申請期限も少し違っていて、離職日の翌日から2ヶ月以内なので、お気を付けくださいね。
宮田部長:
 了解しました。まぁ、いずれにしてもイレギュラーな取扱いになるので、退職する従業員にはハローワークで個別に尋ねて、理解して制度を使うように言いますね。
大熊社労士:
 そうですね。その対応が望まれますね。
宮田部長:
 ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今日は受給期間の延長について取り上げました。あくまでも事前に手続きが必要であることについては十分ご注意ください。なお、これらの取扱いは受給資格の決定前に行いますが、受給資格決定後に病気やけがで働くことができなくなり、その日数が15日以上になるときは、失業手当の代わりに同額の傷病手当金の支給を受けることができるようになっています。


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2013年6月10日「離職票を受け取った従業員のハローワークでの手続き(3)認定日と失業認定申告書とは」
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2013年5月27日「離職票を受け取った従業員のハローワークでの手続き(1)離職理由の確認」
https://roumu.com/archives/65613436.html

参考リンク
ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_procedure.html

(宮武貴美)

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