36協定の特別条項はどれくらいの企業が締結しているものですか?

 厚生労働省のホームページで「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」を見た大熊は、36協定について訪問時にはこの話をしようと思い、資料を手にして車に乗って服部印刷に向かった。


大熊社労士:
 こんにちは。もう今年も残り1週間程度となりましたね。
宮田部長宮田部長:
 本当に早いものですね。年の瀬が近付くと、私も定年に一歩近づいたと思いますね。あ、早くリタイアしたいわけではないのですけどね。
大熊社労士:
 あはは。いずれにしても嫌でも一年の振り返りと来年への目標を考えさせられる時期ですよね。今日は私の方から少しお話しをしようと資料を持ってきました。この「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」なのですけどね、お知らせしたい内容がありました。
宮田部長:
 厚生労働省が行った調査なのですね。それで先生、いったい何が書いてあるのですか?
大熊社労士:
 はい、この調査は時間外労働や休日労働、割増賃金率の状況等の実態把握のために行われたもので、企業がこれらについて、どのように設定しているかが分かるものになっています。
宮田部長:
 じゃぁ、どれくらい残業しているかとか言う統計ということですね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。この調査の中で私が注目したのは、36協定の特別条項についてです。
宮田部長:
 特別条項・・・あの、1ヶ月45時間とかを超えて残業があるときにその時間を延ばせるというやつですね。
大熊社労士:
 はい、そうです。特別条項については以前、お話をしたと思いますので、その説明は割愛して今日の本題に入りますね。特別条項は延長しなければならない特別な事情がある場合に発動する条項です。まぁ、例外的な取扱いですが、この調査によると「特別条項付き時間外労働に関する労使協定の締結」をしている事業場は実に40.5%になるそうです。
宮田部長:
 4割も!?確かに結構多い印象を受けますね。
大熊社労士:
 そうですね。ちなみに大企業が62.3%、中小企業は26.0%となっています。
宮田部長:
 なんとなく大企業は残業が少ないイメージがありましたが、これを見るとそうでもないのですかね?
大熊社労士大熊社労士:
 一概には言えませんし、企業ごとで大きく違うのかもしれませんが、特別条項を結んでいないと原則の時間でしか働かせることができません。何か万が一の事態が発生しても36協定で締結した時間しか働けないことになるため、締結しているというケースも少なからずあるのではないかと想像しています。また労働基準監督官も36協定違反をするくらいであれば、特別条項を設定し、枠を広めに取っておく方が良いというニュアンスの発言をされることも多いように思います。あ、これはあくまでも私の私見ですけどね。
宮田部長:
 なるほど、確かにそうですね。そして、特別条項の本来の目的はそこなんですよね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。それでは、その特別条項でどれくらいの時間外を想定しているかも確認しておきましょう。宮田部長はどれくらいの時間で締結している企業が多いと思いますか?
宮田部長:
 う~ん、あまり多いのも過重労働と言われるし・・・1ヶ月60時間くらいですか?
大熊社労士:
 ありがとうございます。実は一番多いのが、1ヶ月70時間超80時間以下で36.2%になっています。次が宮田部長におっしゃっていただいた1ヶ月50時間超60時間以下で23.5%になっています。
宮田部長:
 へぇ。案外長い時間にしているのですね。
大熊社労士:
 そうですね。いわゆる過労死認定基準で行くと、時間外労働が1ヶ月100時間、2ヶ月から6ヶ月の平均80時間と言われていますので、この80時間というのが、特別条項においても目安になっているのではないかと思います。そして、60時間というのは恐らく改正労働基準法で施行された割増率の引き上げが影響しているのではないかと思います。
宮田部長:
 大企業で1ヶ月60時間を超える残業に対し、割増率を50%にするというものですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。そして、調査結果に戻りますと、1ヶ月100時間超という企業も5.5%あるという現実です。もちろん、実際に100時間を超える残業をさせているわけではないかもしれませんが、可能性としてあるということですよね。
宮田部長:
 そうなんですね。実際にどれくらいまで延長しているのか気になる・・・。
大熊社労士:
 そうですね。さすがに延ばしすぎなのかなと感じます。やはり80時間を超えることが想定される企業は時間外労働削減に真剣に取り組む必要がありますよね。
宮田部長:

 確かにそうですね。弊社でも継続して生産性向上を考え、残業削減に取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
  こんにちは、大熊です。時間外労働については、残業代を適切に払っていれば良いという問題ではありません。過労死やうつ自殺などの問題、そしてブラック企業問題が拡大しているいま、過重労働対策にさらに真剣に取り組む時代がやってきています。


関連blog記事
2012年2月27日「36協定の特別条項の回数管理は従業員個人単位でよいのですか?」
https://roumu.com/archives/65546389.html
2010年1月11日「改正労基法における特別条項付き36協定に関する事項についてはどのように対応すればよいのですか?」
https://roumu.com/archives/65179418.html

(宮武貴美)
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