【無期転換】(2)無期転換は従業員からの申出により行います

 前回、服部印刷で平成25年に施行された改正労働契約法の説明を大熊は行った。今回もその続きとして無期転換の対応について話を始めた。
前回の記事はこちら
2016年8月22日「【無期転換】(1)雇止めという選択肢」
https://roumu.com/archives/65750057.html


大熊社労士:
 さて、今日は無期転換の対応の続きをお話しましょう。
福島照美福島さん:
 大熊先生が前回、帰られてから、早速、有期雇用者のリストを作成したのですが、平成25年4月1日以前から働いていただいているパートさんが多く、平成30年4月から無期転換の対象となる人がほとんどでした。
服部社長:
 やっぱりそうだったね。多少の人員補充で新しいパートさんもいるけれども、他は安定して働いてもらっているからね。
宮田部長:
 福島さんが頑張ってくれたから、私も早速、各部の部長に確認を取ったのだけれども、内心はずっと働いてもらいたいって思っていたパートさんがほとんどでしたよ。
服部社長:
 そう考えると前回のような問題のあるパートさんを除き、当社は無期転換を推奨していきたいものだね。
大熊社労士:
 そうですね。無期雇用になることで、働いている人は安心感を抱くでしょうし、会社としても長く勤めてもらえる期待が高まるはずです。
福島さん:
 そして、部長たちは契約更新の面談の手間もなくなり、私も雇用契約書の作成の手間がなくなる!(笑)
大熊社労士:
 確かにそうですね。近年は有期雇用となると、雇止めのこともきちんと考えながら、契約更新をしていかなければならないので、事務手続きの負担も大きくなっています。それが少しでも減るのはある意味、うれしいことなのかも知れませんね。
服部社長服部社長:
 ところで大熊さん、私の認識だと、無期雇用に転換できる権利は、特に申出がなくても発生すると認識していたのですが、間違いありませんか?
大熊社労士:
 はい、有期雇用が反復更新され通算5年を超えた場合に、自動的に権利が発生します。ただ、その権利を行使するかどうかは、また別の話になります。つまり、権利は発生しても権利を行使するかは別物ということです。
宮田部長:
 え!そうなのですね。でも、無期転換を希望しない人なんているのですか?だって、期間の定めがあるかなしか以外は、変わらないのですよね?
大熊社労士:
 原則としてそうですね。ただ、「まぁ、いまのままでいいや」といったう思いを抱いている人はいるのかも知れません。
福島さん:
 う~ん、となると、大熊先生、無期転換をしたい人は、何らかの形で申出をしてもらうことが必要ですか?
大熊社労士:
 さすがするどいですね。口頭で「無期になりたいです!」と申し出てもらうのもいいのですが、やはり書面で残しておいたほうがよいでしょう。「無期労働契約転換申込書」というような書式も出ていますので、こちらを提出してもらうような段取りで進めましょう。
福島さん:
 承知しました。ところで、この無期転換の申込書ですが、例えば次の更新の2ヶ月前までに提出してもらうようなことは可能ですか?先ほどの話ですと、転換を希望しない人もいるかも知れないということでしたので、そうなると、5年を超えた後でも有期雇用の契約書の更新などが必要になりますよね?
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね、更新が必要になりますね。そうなると契約書の準備や面談の設定も必要になりますので、その事務手続きの時間も考慮に入れて2ヶ月前までに、期限を設定することは可能でしょう。ただし、ここからが重要なのですが、その2ヶ月前の申込み期日に間に合わなかったからと言って、無期転換の権利がなくなるわけではありません。したがって、例えば、契約更新の10日前に無期転換の申出があった場合でも、その申出は有効になります。
服部社長:
 つまり、期限はあくまでも事務手続き上のお願い事項的な位置づけということですね。
大熊社労士:
 まさにおっしゃるとおりです。
宮田部長宮田部長:
 ふと、就業規則に無期転換申出のルールを書いておいた方がよいのではないかと思ったのですが、お願い事項であれば、まぁ、どっちでもよいですかね?
大熊社労士:
 いえいえ、書いておいた方がいいですよ。社内手続きとしては重要になりますからね。ただ、先ほども申し上げたように、無期転換の権利がなくなるわけではありませんので、「2ヶ月前までに申し出ないと申込みをすることができない」というような書き方はダメですよ!
宮田部長:
 私のやりそうな書きすぎ事例ですね(笑)。注意します。
服部社長:
 あはは。就業規則を直した後は大熊さんにちゃんと見てもらうようにね。
宮田部長:
 承知しました!
大熊社労士:
 それ以外にも就業規則に書いて欲しいことがありますので、次回はそれを説明しておくことにしましょう。
服部社長:
 引き続きよろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。「無期労働契約転換申込書」を受け取った会社は、「無期労働契約転換申込み受理通知書」により、本人に通知をするといった対応も求められます。申込書と併せて、整備を進めておきましょう。


関連blog記事
2016年8月22日「【無期転換】(1)雇止めという選択肢」
https://roumu.com/archives/65750057.html
2013年5月15日「無期労働契約転換申込み受理通知書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55564209.html
2013年5月8日「無期労働契約転換申込書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55564208.html
2015年4月13日「[有期雇用特措法(3)]4月から労働条件通知書の様式変更が必要です」
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2015年4月6日「[有期雇用特措法(2)]高度専門職の有期雇用特例について説明します」
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2015年3月30日「[有期雇用特措法(1)]定年後の有期雇用契約の特例を適用する場合にはこの手続きが必要です」
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2015年3月11日「労働条件通知書(一般労働者 有期雇用特別措置法による対象者用)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55616901.html
2015年3月2日「4月に施行される有期雇用特別措置法のパンフレット ダウンロード開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52066505.html
2015年2月23日「4月からパートさんの労働条件通知書を変更しなければなりませんよね?」
https://roumu.com/archives/65694366.html
2014年12月1日「定年後に嘱託社員になった従業員の無期転換ルールが変更になります」
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2014年11月22日「来年から定年再雇用者と高度専門知識を有する有期雇用者は労働契約法の無期転換から除外に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52056534.html
2013年2月18日「定年後に嘱託社員になった従業員が5年勤務したら無期転換になるのですか?」
https://roumu.com/archives/65599459.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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