[改正育児・介護休業法(4)]介護のための残業免除の制度が始まります

 「うーん、やはりこの制度の新設が、一番影響が大きいよな」。大熊はこのような独り言を言いながら、服部印刷の門をくぐった。
前回までの記事はこちら
2016年11月7日「子の看護休暇・介護休暇が半日単位で取得できるようになります」
https://roumu.com/archives/65758285.html
2016年10月24日「介護休業が3回に分割して取得できるようになります」
https://roumu.com/archives/65756970.html
2016年10月17日「育児休業を取得できる有期契約の従業員の範囲が変更になります」
https://roumu.com/archives/65756109.html


服部社長:
 大熊さん、今日はやけに浮かない顔をしていますね。どうかしたのですか?
大熊社労士:
 あぁ、服部社長、ご在社でしたか。ここのところ、育児・介護休業法の改正についてご説明しているのですが、今日、ご説明をしようとしている制度の新設について、影響が大きいなぁと改めて思っていたのですよ。
宮田部長:
 影響が大きい?どんな制度なのですか?
大熊社労士:
 残業の免除の制度です。
宮田部長宮田部長:
 残業の免除なら、ね、福島さんも育児中だからほとんどやっていないし、イマドキってちょうど時短を進めたり、生産性を高める取組みをすることが企業の課題になっているじゃないですか。私もこのような本を読んで勉強していますよ!
大熊社労士:
 おぉ、私の知り合いの社労士が執筆者の一人に名を連ねている本ですよ。彼の代わりに購入のお礼を申し上げます!
福島照美福島さん:
 部長、でも、私の場合には事務職で、頼りになる部長の存在もあるし、残業なしでやっていけますが、介護となると40代・50代の部課長職の人も抱える問題だと思うので、なかなか残業をゼロにするのは難しいのではないですか?
服部社長:
 確かに福島さんの指摘はもっともだな。そういう私も両親が健在だからこそ、介護の不安というのは今後、いずれ真剣に向き合わないといけないだろうと漠然と感じているから。
宮田部長:
 でも、あれでしょ?育児も残業の免除も期間限定だから、介護だって一定期間なんでしょ?だったら、まぁ、周りが頑張るしかないんじゃないですか~?
大熊社労士:
 いえいえ、そこが考えるポイントなんです。今回の介護の残業免除は、介護が終了するまで利用できる制度なのです。育児のように子が3歳になるまで、つまり最長3年間というわけにはいかないのです。
服部社長:
 そうか、そうすると介護が長引けば長引くほど周りへの負担も大きくなることが予想される。長いと10年以上介護を続けるというケースも出てくるかも知れない。
宮田部長:
 そりゃ影響大きいじゃないですか!
大熊社労士大熊社労士:
 そうなんですよ。だから最初に伝えたじゃないですか(笑)。特に最近は女性活躍推進で女性の就労を支援しています。このこと自体はもちろん、あるべき姿なのかもしれませんが、これまでのように介護も奥さん任せと行かない男性も増えてくることが予想されます。
服部社長:
 なるほど。そうなると、業務への影響も考えて、時には本人と話し合い役職を解くことも考えなければならないことが出てくるかも知れないですね。
大熊社労士:
 確かにそうですね。ただ、この制度を利用したことで降職されたとか労働条件を引下げたと言われないように留意しなければなりません。こうなると、在宅勤務等、勤務場所を選ばない働き方の検討も進めなければならないのかも知れません。
服部社長:
 確かにそれはいえますね。特に部課長職であれば、働き方の柔軟性を持たせてもらい、他の従業員の手本になってもらいたいですからね。
福島さん:
 ところで、大熊先生、この制度は何回でも利用できるのですか?介護休業のように3回で分割というようなことはあるのですか?
大熊社労士:
 よい質問ですね!この制度は、1回につき、1ヶ月以上1年以内の期間について請求することになっています。そして、何回でも請求できます。つまり介護をしている間はずっと請求ができるということになるのです。
福島さん:
 ありがとうございます。先ほどの先生のお話に女性の就労が出てきましたが、私も「この日は残業が必要」ということが分かっている日は、子どもの世話を家族に頼むことがあります。部課長職でない従業員の皆さんには、家族で調整しながら、介護を乗り切るように案内できたらなぁと思います。
服部社長服部社長:
 そうだね。会社としては残業をさせられないということで困ることが出てくるかも知れないけど、でも、それはいつか避けられないことになるだろうから、福島さんの言うように、うまく乗り越える方法を従業員と一緒に考えていく必要があるのだろうね。
大熊社労士:
 そうですね。また何かあればご相談ください。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。この介護の残業免除制度は、労使協定を締結することで勤続1年未満の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者について対象外とすることができます。今回の改正では労使協定を結び直すことも必要になることもあるかと思いますので、確認しておいてください。


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2016年10月10日「育児介護休業規程(簡易版)の改正前後の内容が分かるwordファイル」
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2016年9月28日「厚生労働省から公開された改正育児・介護休業法「平成28年改正法に関するQ&A」」
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2016年9月6日「改正育児・介護休業法対応の規定例(簡易版)とあらましのダウンロードがスタート」
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2016年8月3日「遂に公開された改正育児・介護休業法の参考資料」
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2016年6月28日「厚労省から改正育児・介護休業法の概要リーフレットが公開されました」
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参考リンク
厚生労働省「育児・介護休業法について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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