社用の携帯電話を持って帰っただけでは労働時間にはなりません

 昨夜の世界野球プレミア12の日本優勝を見て、盛り上がった大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!
宮田部長宮田部長
 おはようございます。大熊先生、スポーツ好きだから昨日の野球、ご覧になられましたよね?やっぱり優勝っていうのは気持ちいいですね。
大熊社労士
 はい、テレビで見ましたよ。いきなり2ランを打たれて最初はどうなるかと思いましたが、結果的にはいい試合になりましたね。継投に次ぐ継投でしたが、どのピッチャーもいい投球でした。
服部社長服部社長
 若い投手のピッチングは本当に見事でしたね。完勝でした。さてさて、今日は労働時間の続きでしたね?
大熊社労士
 はい、前回は研修・教育訓練における労働時間の取扱いについてお話しましたが、今日はそれ以外の論点についてお伝えします。ますは仮眠・待機の時間についてですが、仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しないとされています。
服部社長
 労働時間の定義から考えればそうなのでしょうね。
大熊社労士
 はい、その通りです。このテーマに関連し、今回の厚生労働省のリーフレットでは、よく質問があるケースとして「週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間」は労働時間には当たらないとしています。
宮田部長
 この事例はありそうですね。携帯電話を持って、なにかあったら対応しなければならない時間は待機時間なので、労働時間であるという意見も聞かれるのではないかと思います。それだけ質問が多い事例なんだと思います。
大熊社労士大熊社労士
 次は御社でもありそうな労働時間の前後の時間の取り扱いというケースです。まず、更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しないとされています。また、交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合にも、労働時間に該当しないとされています。
福島照美福島さん
 これらは当社にもあてはまりますね。特に2つ目については現実的に結構困っています。満員電車で来るのは嫌だということで、朝早めに出社して、社内で少しゆっくり過ごしている社員がいるのですが、現実的にはパソコンの電源を入れているので、アクセスログはかなり早い時間で記録されているということがあるのです。実際には仕事はせずに、ネットニュースを見ながらコーヒーを飲んでいたりするんですけどね。
大熊社労士
 そういったケースは多いですね。基本的には先ほどのような解釈になりますので、現実的な対応としてはアクセスログと記録した労働時間との差異について説明できるようにはしておくことが求められます。
宮田部長
 承知しました。
大熊社労士
 最後に移動時間の取扱です。取引先の会社の敷地内に設置された浄化槽の点検業務のため、自宅から取引先に直行する場合の移動時間や、遠方に出張するため、仕事日の前日に当たる休日に、自宅から直接出張先に移動して前泊する場合の休日の移動時間は労働時間にならないとされています。
宮田部長
 この出張の移動については当社でもたまにありますが、社員の不満は少なくありません。
大熊社労士
 そうでしょうね。実務上は日当を支給するなどして、バランスをとるということになるのでしょうが、まずは労働時間には該当しないという原則を確認した上で、実態的な対応を考えるべきかと思います。労働時間にならなくても、身体的な負担は小さくありません。できるだけそのような移動はないようにするなどの配慮が必要です。
服部社長
 分かりました。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。今回は厚生労働省が制作したリーフレット「労働時間の考え方「研修・教育訓練」等の取扱い」から教育研修以外の具体例について取り上げました。全体としてはよくあるケースについて具体的に言及しているという印象を受けますが、ここで改めて重要になるのは労働時間の定義の理解です。使用者の指揮命令下にある時間という定義を理解していれば、基本的に判断をすることができるはずです。管理者には改めてこの定義をきちんと理解するように教育を行っておきましょう。


関連blog記事
2019年11月12日「終業時刻後の自主練習は原則的に労働時間には該当しません」
https://roumu.com/archives/99523.html
2019年10月17日「厚労省から示された研修・教育訓練等を始めとした労働時間の考え方」
https://roumu.com/archives/99034.html
2019年10月17日「リーフレット:労働時間の考え方「研修・教育訓練」等の取扱い」
https://roumu.com/archives/99022.html

参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

(大津章敬)