[ワンポイント講座]派遣社員は常用労働者数にカウントするのか

 4月になると人事異動が多く行われることから、事業所単位で社員の人数を数えてみると以前よりもかなり増減しているところもあるのではないでしょうか。衛生管理者の選任など事業所の安全衛生管理体制を構築していく上では、事業所の労働者の人数がキーポイントとなるため、人数を定期的にチェックしておくことが望まれます。そこで、今回は派遣社員を受け入れている場合の安全衛生管理体制の構築についてお話しましょう。


 法令により求められる安全衛生管理体制は、事業所の業種や労働者の人数によって異なりますが、主なものとしては、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が挙げられます。特に衛生管理者については、業種にかかわらず常時使用する労働者の人数が50人以上であれば、選任することが義務づけられています。ここで問題になるのが、「常時使用する労働者の人数」の定義ですが、これについては通達が出されており、日雇労働者、パートタイマー等も含めて、常態として使用する労働者の人数を指しています。つまり、正社員だけでなく、その事業所で働くパートやアルバイトも含めて、常用労働者数をカウントする必要があります。そのため、会社としては企業単位ではなく、本社や営業所ごとに労働者の人数を把握して、それにあった安全衛生管理体制を構築することが求められています。


 さて今回の主題である派遣労働者ですが、派遣労働者についてはこの常用労働者の人数としてカウントする必要があるのでしょうか?例えば、本社事業所の人数がパートやアルバイトをいれると45人であるが、派遣社員を入れると50名を超えてしまうといったケースがあります。この場合、全体の人数が50人を超えているので衛生管理者の選任義務があるのでしょうか。それとも自社の社員だけであれば50人を下回っているため、選任の義務はないのでしょうか。この労働者の人数のカウントについても通達が出されており、派遣先については派遣労働者の数を含めて常時使用する労働者の数を算出することになっています。そのため、派遣労働者の人数を含めると事業所の総人数が50人以上となるのであれば、衛生管理者を1人以上置かなければならないということになります。


 また近年においては、過重労働やメンタルヘルスへの対策として使用者の対応責任が高まり、それに伴って衛生管理者に求められる役割が重大なものになっています。また、労働基準監督署が行う定期監督においても、衛生委員会の開催など安全衛生管理体制が適切に守られているのかといった点を重視するようになっています。そのため、企業としては法で定められた人数を満たす衛生管理者が選任されているのかチェックし、足りないようであれば早急に対応することが求められます。


[関連法規]
労働安全衛生法 第12条(衛生管理者)
 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 前条第2項の規定は、衛生管理者について準用する。


労働安全衛生法施行令 第4条(衛生管理者を選任すべき事業場)
 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。


[関連通達]
昭和47年9月18日 基発第602号
 本条で「常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する」とは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数が本条各号に掲げる数以上であることをいうものであること。


昭和61年6月6日 基発第333号、昭和63年10月1日 基発第652号
 派遣中の労働者に関しての総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等および産業医の選任の義務並びに衛生委員会の設置の義務は、派遣先事業者および派遣元事業者の双方に課せられているが、当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先の事業場および派遣元の事業場の双方について、それぞれ派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出するものであること。



関連blog記事
2008年10月17日「中小企業で遅れる長時間労働者に対する医師による面接指導制度の認知」
https://roumu.com
/archives/51429470.html

2008年9月5日「職場で急増する職務内容や負荷、環境に関する悩み」
https://roumu.com
/archives/51402104.html

2008年9月2日「長時間労働者への医師による面接指導の記録保存」
https://roumu.com
/archives/51401811.html

2008年3月25日「平成20年4月から長時間労働者への医師による面接指導の実施が50人未満の事業所でも義務化」
https://roumu.com
/archives/51285202.html


参考リンク
栃木労働局「安全衛生管理体制の構築について」
http://www.tochigi-roudou.go.jp/hourei/eisei/kanritaisei.html


(福間みゆき)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。