中小企業で遅れる長時間労働者に対する医師による面接指導制度の認知
平成18年4月の労働安全衛生法改正により、長時間労働への医師による面接指導制度が導入され、今年の4月からはブログ記事「平成20年4月から長時間労働者への医師による面接指導の実施が50人未満の事業所でも義務化」でお伝えしたように企業規模に関係なく、この制度を導入することが義務化されています。この面接指導は「時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり100時間を超え」、かつ「疲労の蓄積が認められる」という2つの要件のいずれにも該当する労働者が申し出を行った場合に行う必要がありますが、先日、厚生労働省が発表した「平成19年労働者健康状況調査結果の概況」の中に、この制度の認知状況についての調査項目がありましたので、本日はその結果を取り上げましょう。
長時間労働者に対する医師による面接指導制度を知っている事業所の割合は企業規模計では45.6%という非常に低い水準に止まっています(グラフはクリックして拡大)。従業員数300名以上の企業では100%となっていますが、今春に義務化された50名未満企業では51.3%、更に30名未満企業では39.6%となっており、法改正の情報が小規模企業には十分に浸透していない状況が明らかになっています。
近年の労働行政においては従業員の健康管理が最重要課題の一つに掲げられており、労働基準監督署の調査においても36協定の締結、健康診断の実施、衛生管理者の選任・衛生委員会の開催などと共に、この長時間労働への医師による面接指導制度の実施状況も重点的に指導されています。そもそもは企業の安全配慮義務を履行し、従業員に安全かつ健康に勤務してもらうための環境作りは企業の労務管理における最低限の実施事項であるべきであり、そのためにも過重労働の撲滅とこの面接指導のような仕組みは確実に実施していきたいものです。なお、この調査によれば実際に面接指導等を実施した企業の割合は、企業規模計で12.2%となっています。
関連blog記事
2008年9月5日「職場で急増する職務内容や負荷、環境に関する悩み」
https://roumu.com
/archives/51402104.html
2008年9月2日「長時間労働者への医師による面接指導の記録保存」
https://roumu.com
/archives/51401811.html
2008年3月25日「平成20年4月から長時間労働者への医師による面接指導の実施が50人未満の事業所でも義務化」
https://roumu.com
/archives/51285202.html
2006年5月22日「改正労働安全衛生法による長時間労働者の面接指導制度」
https://roumu.com
/archives/50569394.html
参考リンク
厚生労働省「平成19年労働者健康状況調査結果の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/anzen/kenkou07/index.html
(大津章敬)
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