[ワンポイント講座]パートが年休を取得した際に支払う賃金額

 来春の労働基準法改正では年次有給休暇(以下、「年休」とする)に関する改正が実施されますが、年休に関してはパートタイマー等の時給者が年休を取得した場合、いくらの賃金を支給すればよいのか対応に困ることがあります。そこで今回のワンポイント講座では、パートが年休を取得した際の賃金額について解説しましょう。


 そもそも年休を取得した際に支払われるべき賃金は、以下の3つのいずれかとされています。
平均賃金
所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
健康保険法の標準報酬日額に相当する金額


 のいずれによるかはあらかじめ就業規則に定めておく必要があり(労働基準法第39条第6項)、については労働者の過半数で組織する労働組合、組合がない場合は労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結することになっています。実務的には、の通常の賃金を支払っている企業が多いのではないかと思います。


 ここで問題になるのがパートが年休を取得した場合に支払う賃金額を以下に設定するかです。例えば労働契約書において1日の所定労働時間が6時間といったように固定されている場合は、上記のからのいずれの方法によっても、特に問題はありませんが、例えば、月曜日が4時間、水曜日が6時間というように曜日によって所定労働時間が変わってくるような場合には、の方法で支払うことになっていると休む曜日によって手当額が変わってしまいます。


 年休取得の際の賃金額についてはその取扱いを就業規則において定めることとなりますが、こうしたパートタイマーの状況を前提に考えると、の平均賃金に基づき手当を支給することが有効です。これにより、いつ年休を取得したとしても労使双方にとって公平な取扱いができます。ただし、平均賃金とした場合、毎回、平均賃金を計算する必要があるため手間が残ることに注意が必要でしょう。。


[関連法規]
労働基準法 第39条第6項
 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法(大正11年法律第70号)第99条第1項に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。



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参考リンク
大阪労働局「(第39条)年次有給休暇」
http://www.osaka-rodo.go.jp/joken/rokiho/kyuka/rokiho39.html


(福間みゆき)


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