同僚の前でひどく怒鳴ってしまった、これはパワハラになるのでしょうか?

 本格的な夏を迎え、汗をふきながら服部印刷に到着した大熊社労士。総務の福島さんが出してくれた冷たい麦茶でのどを潤していると、宮田部長がドタバタと入ってきた。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、いいタイミングで訪問してくださいました。来社早々で申し訳ないのですが、相談にのってください。今週社長は1週間出張で不在なので、どうしたらよいか迷っていたんです。
大熊社労士:
 もちろん、結構ですよ。どのようなご相談ですか?
宮田部長:
 実は、入社2年目の社員が昨日、今日と無断欠勤をしているのです。彼は大学卒業と同時に、九州から出てきて一人住まいをしているのですが、アパートへ連絡してみても、電話に出ないのです。
大熊社労士:
 そうですか、それは心配ですね。体調が悪かったとか、欠勤の原因に何か心当たりはありますか?
福島照美福島さん:
 はい、実は一昨日、彼と退社の時間が一緒になり駅まで仕事の話をしながら帰ったのですが、その日、上司から注意を受けたようなのです。かなり厳しく注意を受けたみたいで、同僚の前で怒鳴られたといってかなり落ち込んでいました。
宮田部長:
 注意をした上司も、その社員と電話連絡が取れたかと何度も総務に聞きにきているようです。自分はそのつもりはなくても、結果的にパワハラをしてしまったのではないかとかなり気にして、つい先ほどまで話を聞いていましたところなんですよ。
大熊社労士:
 なるほど。まずは、欠勤している社員に引き続き連絡を取ってください。どうしても連絡が取れないようであれば、アパートを訪問するなどして確認をしてください。体調不良などが原因ということも考えられますから。体調不良ではなく、上司の注意指導に納得できなかったり、不満があって欠勤しているのでしたら、彼の話をよく聞いてあげてください。上司の前では、言い出せなかったこともあるかもしれませんから。その上で、会社としての対応を検討すればよいでしょう。しかし最後に、上司に対し不満や言い分があったとしても、無断欠勤は会社のルールに違反していることを説明し、反省を促しておくことも必要です。
宮田部長:
 わかりました。とりあえずは、彼の住んでいるアパートを訪ねてみることにします。
福島さん:
 注意をした上司は、普段怒ったことのないので、話を聞いてびっくりしました。でも、業務上の注意や指導とパワハラの線引きは難しいでしょうね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね、そもそもパワハラは業務上の注意指導やしつけとの境界線が実務上曖昧であるため、上司としては通常の指導の範囲と考えていても、部下からはパワハラであると指摘されることが少なくありません。両者の認識に違いがあるため、非常に難しいのです。
福島さん:
 しかし、何らかの対策を打っていかなければいけないでしょうね。
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。パワハラは、加害者や被害者の個人的な問題だと言う人がいますが、決してそうではありません。職務上の立場と大きく関係して起きる問題ですので、被害者の立場からすると、職場での立場などを利用して人を傷つける行為であるといえます。パワハラを放置していると、社員の尊厳を傷つけるだけではなく、モラールダウンをもたらし、その結果、会社の業績や社会的信用の問題にまで発展しかねません。ゆえに、パワハラは、企業にとって労務管理上の問題なのです。この点をしっかりと認識しておく必要があります。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、パワー・ハラスメント(パワハラ)について取り上げてみました。パワハラが引き起こされる背景としては、能力主義や成果主義といった仕事の価値観の変化が、社員間においても競争を激化させ、職場の人間関係に影響を与えたこと、女性の職場進出や非正規雇用社員の割合増加といった雇用形態の違い、就労意識の多様化に対する従来の会社中心(男性中心)の社会意識のゆらぎや反発があること、そうした環境の影響を受けて、人間関係が複雑になり、それに応じてコミュニケーションのとり方が難しくなる中で、それに対応できていない状態であることなどがあげられます。したがって、パワハラは企業が責任をもって対応すべき労務管理上の問題であることをきちんと理解する必要があります。


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https://www.meinan.net/seminar/20080826rout.html



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参考リンク
8月26日「パワハラ・セクハラ その現状と企業に求められる実務対策」セミナー(豊田市)
https://www.meinan.net/seminar/20080826rout.html
社団法人産業カウンセラー協会「産業カウンセラー440 人が見る職場/悲惨さ増す「職場のいじめ」の実態」
http://www.counselor.or.jp/pdfs/071212.pdf


(鷹取敏昭)


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