労働基準監督署の申告監督とはどういうものですか?

 労働基準監督署の立入調査のうち労働者からの申告に基づいて行われる臨検監督について、服部社長と宮田部長は大熊社労士から解説を受けている。



服部社長:
服部社長 大熊さんの説明で、労働基準監督署の立入調査の中に、労働者からの依頼に基づいて行われる「申告監督」というものがありましたが、これはどのような調査なのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、申告監督とは、労働基準監督者へ労働者などから「うちの会社は、労働基準法に違反しているので調べて、正しい扱いをするように指導して欲しい」という申告、いわゆる依頼があり、これに基づいて実施する立入調査のことです。
服部社長:
 いま働いている社員が、労働条件に不満があるときに監督署へ直接申し出るということですね。
大熊社労士:
 そうですね。もっとも、いま働いている社員だけではなく、中には既に退職した社員から、勤務していたときの労働条件について申告することもあります。
宮田部長:
 なるほど、勤務している最中は申告しにくいけれども、退職してしまえば申告しやすくなるのでしょうね。
大熊社労士:
 そうですね。特に退職するときにトラブルがあった場合などは、特に多いですね。まあ、いろいろな感情があるのでしょう。また、最近は公益通報者保護法の施行や様々な偽装事件の報道などの影響から、労働者の内部告発への抵抗感も小さくなっていますので、在職している者の中から申告するケースも増えているようです。
宮田部長宮田部長:
 確かにそうでしょうね。ここ数年、○○偽装など、企業の様々な問題が内部告発でいろいろ暴かれて、社会問題になっていますからね。それにしても、いま働いている者からの申告ということは、申告した者が特定されますよね。ある意味、非常に勇気が必要だと思いますが。
大熊社労士:
 いえいえ、申告は法令に違反している事業所がどこかがわかれば、匿名でも受け付けられます。その方法は、監督署の窓口で直接申し出るほか、電話や文書などを利用して依頼することもできます。
宮田部長:
 それは、労働者を守るという立場から匿名でも受け付けるということでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、そのとおりです。また、例え申告者が特定できたとしても、労働基準法では、その者に不利益な取り扱いを行ってはならないと定めています。したがって、申告したことを理由に、もし解雇などを行った場合は、無効とされます。さらに、監督署は会社に申告監督と分からないよう定期監督という建前で立入調査に入るようにしているようです。これも申告監督であることが分かって、会社が申告した労働者を探し出し、不利益な取り扱いをすることを防ぐために工夫しているからです。なお、申告があった場合、監督署は優先的に対応する姿勢で臨んでいます。
服部社長:
 申告の件数は多いのですか?
大熊社労士:
 愛知県でいえば年間2,000件を超えており、非常に多いといえるでしょう。特に最近は、派遣労働者からの申告が増加傾向にあるのが特徴です。
服部社長:
 申告には、どのような内容が多いのでしょう?
大熊社労士:
 申告の内容は、賃金不払に関するものが圧倒的に多いですね。次いで、解雇の順となっており、監督署の調査の結果をみると、違反率は66.5%となっています。
宮田部長:
 労働基準監督署の立入調査について、よくわかりました。わが社では、法令に基づいた対応をしているつもりですが、もし調査に入られて是正勧告や指導を受けるようなことがありましたら、ご相談しますので、そのときはよろしくお願いします。ありがとうございました。
大熊社労士:
 できればそのようなご相談がないことを願っていますが、もしそのようなことになった場合にはすぐご連絡ください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、労働者からの申告に基づく「申告監督」について取り上げてみました。申告をした労働者に対して不利益な取り扱いをしてはならないと、労働基準法第104条に規定されています。不利益な取り扱いとは、申告したことを理由として、その労働者を解雇したり、配置転換や降格、降職、賃金の引き下げなどの取り扱いをすることをいいます。もし、そのような取り扱いをすると、使用者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。申告監督において全てに違反が認められるわけではなく、労働者等の思い違いなどもありますが、会社として、まず基本的なルールである労働基準法などの法令を守り、労働条件を労働者に対してきちんと説明するようにしましょう。


[関連法規]
労働基準法 第104条 (監督機関に対する申告)
 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。


労働基準法 第119条(罰則)
 次の各号の一に該当する者は、これを6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1 第3条、第4条、第7条、第16条、第17条、第18条第1項、第19条、第20条、第22条第4項、第32条、第34条、第35条、第36条第1項ただし書、第37条、第39条、第61条、第62条、第64条の3から第67条まで、第72条、第75条から第77条まで、第79条、第80条、第94条第2項、第96条又は第104条第2項の規定に違反した者
2 第33条第2項、第96条の2第2項又は第96条の3第1項の規定による命令に違反した者
3 第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
4 第70条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第62条又は第64条の3の規定に係る部分に限る。)に違反した者



関連blog記事
2008年7月21日「労働基準監督署の立入調査のチェックポイントを教えてください」
https://roumu.com/archives/64941343.html
2008年7月14日「労働基準監督署の立入調査では、どのようなことをするのですか?」
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2008年7月7日「労働基準監督署の立入調査とは何ですか?」
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2007年10月7日「平成18年度のサービス残業是正支払額は1,679社で227億円」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51113831.html
2005年6月20日「是正勧告とはなにか?」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/25495617.html


参考リンク
愛知労働局「平成19年の申告事案処理状況」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/jyoho/kantoku/h19shinkoku.pdf
東京都労働局「平成19年申告事案の概要について」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2007/20080219-shinkokujian/20080219-shinkokujian.html
愛知労働局「平成19年に実施した定期監督等の実施結果」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/jyoho/kantoku/h19teikimatome.pdf
東京労働局「平成19年に実施した定期監督等の実施結果」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2008/20080512-kantoku/20080513-kantoku.html
厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果~平成18年度は約227億円」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/10/h1005-1.html
東京労働局「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成18年度)」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2007/20071005-kantokushidou/20071005-kantokushidou.html
厚生労働省「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/10/h1005-1b.html
厚生労働省「賃金不払残業総合対策要綱」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/10/h1005-1a.html
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/10/dl/h1005-1a.pdf


(鷹取敏昭)


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