小学校休校等対応助成金の事後申請を検討してみるとよいでしょう

 緊急事態宣言解除は喜ばしくも、再び新規感染者数が増加していることを心配している大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!最近はすっかり暑くなってきましたね。
宮田部長宮田部長
 本当にそうですね。都市によっては、早くも夏日なんていう話も出ています。大熊先生も私も暑さには弱いんで、これからの季節は困りますね。ほんとに。来月は冷房で部屋をガンガン冷やしておきます(笑)
大熊社労士
 ありがとうございます(笑)。さて、今日は福島さんからご相談があると聞いていますが。
福島さん
 はい、実は小学校休業等対応助成金のことなんです。当社でも小学校休業や保育園の登園自粛などで、仕事に来られない従業員が数名出ています。本当であれば、助成金も活用し、給与を支給してあげたいと考えていたのですが、この助成金は100%の賃金保証が前提となっており、躊躇していました。でも、年次有給休暇を使い切って、実際に欠勤が発生している者も出ていて、なんとかできないものかと考えていたのです。
服部社長服部社長
 この問題には本当に頭を抱えています。個人的には、本人の責任ではなく、仕事に来られないのだから、給与を保証してあげたいと思っています。確かに上限が8,330円ですので、いくらかの持ち出しは発生しますが、そんなことは別にいいのです。しかし、祖父母やママ友などの協力を得て、無理をしながら出勤してくれる従業員が多いことを考えると、100%の給与保障にはなかなか踏み切れません。また当社の従業員ではないと信じていますが、「給与が保証されるのであれば休めばいい」というようなモラルハザードが起こることも懸念しています。
大熊社労士
 本当にそうですよね。そのお気持ちはよく分かります。実は最近、SNSを見ていても、従業員側からの「特別有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額全額が助成金として支給されるのに、どうして会社はそれを申請して賃金を支給してくれないのか」という書き込みが多く見られます。そこで私もなんとか労使共に無理のない対応がないものかと考えていたところなのです。
福島さん
 そうだったのですね。それでいい案はありましたか?!
大熊社労士
 そうですね。私が考えた案は、これまで欠勤した日や取得した年休を、6月中旬以降に事後的に特別休暇に振り替えて、助成金を申請するというものです。
福島さん
 え、そんなことができるのですか?
大熊社労士
 はい、まずは以下のQ&Aをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000633495.pdf
Q6-3 年次有給休暇や欠勤を、事後的に特別休暇に振り替えた場合は対象になりますか。
A 本助成金においては対象になります。なお、年次有給休暇を事後的に特別休暇に振り替える場合には、労働者本人に説明し、同意を得ていただくことが必要です。
Q6-4 欠勤や無給の休暇を、事後的に有給の特別休暇に振り替えましたが、賃金締切日を過ぎていたため、特別休暇日の賃金を、翌月の賃金で支払いました。この場合でも助成金の対象となりますか。
A 翌月の賃金で支払った場合でも対象となりますが、その旨がわかる確認書類(翌月分の給与明細等)を添付して申請を行ってください。
福島照美福島さん
 本当ですね。一旦、欠勤や年休で処理された日を、事後的に特別休暇に振り替えた場合でも、この助成金は申請が可能なのですね。
大熊社労士
 そうなのです。緊急事態宣言が解除され、いま学校も段階的に正常化してきています。たぶん6月中旬には通常通りの状態に戻っていることでしょう。となれば、それ以降に特別休暇の扱いを事後的に決定すれば、新たな対象者が出て来ることはなく、先ほどのモラルハザードの問題は発生しません。
服部社長
 確かにそうだ。
大熊社労士大熊社労士
 さらには、助成金の上限額8,330円ですが、こちらは15,000円まで引き上げられることが厚生労働省より発表されており、まもなく詳細が示される予定です。この上限引き上げにより、会社の持ち出しが発生するケースは非常に限定的なものになるでしょう。また、従業員間の不公平感の問題については、賞与の評価などに反映するといった工夫を行うことが想定されます。ただ、本質的には「困ったときにはお互い様」という風土を醸成すること、またお休みを取得する側も、少なからず同僚に負担を負ってもらっているということを理解し、それへの感謝の気持ちを示すなどの配慮が求められます。
福島さん
 そうですよね。「権利だから当然」といった態度だと、周囲の協力を得ることも難しくなってしまいますからね。
大熊社労士
 実はそういったところが、実務では一番大事であり、ケアが必要かなと思っています。
服部社長
 大熊さん、これはいい案ですね。当社でも検討を行ってみます。福島さん、まずは対象者のピックアップと学校等の状況についてまとめてください。
福島さん
 了解しました!ありがとうございます!

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 おはようございます。大熊です。歴史に残るような大混乱の時代になってしまい、企業も従業員も大きな不安に包まれています。今回、小学校が休校することによって従業員が働けないという問題が発生した訳ですが、これは会社も従業員も被害者であり、どちらかが悪いという問題ではありません。今後、ポストコロナの時代に安定的な業務の回復を進めるためには従業員の安心感を高め、そのモチベーションを引き出すことは不可欠です。今回の上限額の引き上げにより、企業のコスト面の負担は限りなく小さくなっており、デメリットが少ない事後申請であれば十分に検討できる状況にあるのではないでしょうか。

 なお、本助成金の申請はそれほど難しいものではありませんが、厚生労働省では本助成金の申請方法に関する解説動画(全国社会保険労務士会連合会協力)も公開しておりますので、是非ご覧ください。
https://roumu.com/archives/102301.html


関連記事
2020年5月26日「小学校休業助成金 上限額引上げ4月1日に遡り適用 雇調金も同様か?」
https://roumu.com/archives/103049.html
2020年5月13日「短時間授業や分散登校の際の小学校休業等対応助成金の取扱い」
https://roumu.com/archives/102775.html
2020年5月12日「小学校休業等対応助成金の送付先住所が変更になりました」
https://roumu.com/archives/102735.html
2020年5月11日「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金をご活用ください」
https://roumu.com/archives/102739.html
2020年4月21日「保育所自粛要請等により小学校休業等対応助成金の申請が今後増えそうです」
https://roumu.com/archives/102306.html
2020年4月18日「厚生労働省 小学校等休業対応助成金の解説ビデオ(概要から手続まで)を公開」
https://roumu.com/archives/102301.html

参考リンク
厚生労働省「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金を創設しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金の上限額等の引上げ及び対象期間の延長について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11498.html

(大津章敬)