[年金制度改正法④]60歳台前半の在職老齢年金における支給停止額の変更

 年金制度改正法の第4回目は、在職老齢年金制度の見直しについてとり上げましょう。


■前回までの連載は以下を参照
第1回:短時間労働者への社会保険適用拡大(2024年10月には51人以上規模へ)」
https://roumu.com/archives/103313.html
第2回:短時間労働者の社会保険加入要件 1年以上の雇用見込から2ヶ月超の雇用見込へ
https://roumu.com/archives/103318.html
第3回:弁護士・税理士・社労士等の個人士業に関する社会保険の適用拡大
https://roumu.com/archives/103323.html


 高齢者雇用が促進されていることもあり、年金を受け取りながら働く人は増えているようです。ただし、老齢厚生年金を受け取りながら働く人について、在職老齢年金として年金の一部または全部が支給停止されることがあり、労働時間を短く抑えるといった、労働力の提供について抑制に向かわせるような判断が行われています。

 老齢厚生年金の支給額の停止の計算には、給与と年金の合計額(老齢厚生年金の額と標準報酬月額等)が関係しており、一定の計算式で算出されます。また、計算式は60歳以上65歳未満(低在老)と、65歳以上(高在老)でわかれています。今回の改正では、この計算式が変更となり、計算の際に用いられる低在老の支給停止の基準額が28万円から、高在老と同額の47万円に引上げらます。制度の開始は2022年4月からとなっています。

 これにより、老齢厚生年金の支給停止額が少なくなり、また、年金の支給停止を気にせずにより多くの給与をもらおうという年金受給者も出てくることから、労働力の活性化につながることも期待されています。


関連記事
2020年6月12日「[年金制度改正法①]短時間労働者への社会保険適用拡大(2024年10月には51人以上規模へ)」
https://roumu.com/archives/103313.html
2020年6月15日[年金制度改正法②]短時間労働者の社会保険加入要件 1年以上の雇用見込から2ヶ月超の雇用見込へ
https://roumu.com/archives/103318.html
2020年6月17日「[年金制度改正法③]弁護士・税理士・社労士等の個人士業に関する社会保険の適用拡大」
https://roumu.com/archives/103323.html

参考リンク
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
法令等データベース「「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」の公布について(通知)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200611T0010.pdf
日本年金機構「適用事業所と被保険者」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150518.html
(宮武貴美)