厚労省から示された在宅勤務・テレワーク時の交通費および在宅勤務手当の社会保険の取扱いについて

 コロナ禍で、在宅勤務・テレワークは急速に拡大し、厚生労働省から「テレワークガイドライン」が更改されたり、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」が公開される等、これまであまり問題とされてこなかった取扱いの整理が行われています。

 このような中、厚生労働省年金局事業管理課長は、日本年金機構事業管理部門担当理事宛に「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について」という事務連絡を発出、在宅勤務・テレワーク時の交通費および在宅勤務手当の社会保険の取扱いについて示しました。

 「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」において変更された点は以下の通りです。
 
問1 在宅勤務・テレワークを導入し、被保険者が一時的に出社する際に要する交
通費を事業主が負担する場合、当該交通費は「報酬等」に含まれるのか。
(答)基本的に、当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かに応じて、それぞれ以下のように取扱う
①当該労働日における労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
 労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、当該費用は原則として実費弁償と認められ、「報酬等」には含まれない。
②当該労働日における労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合
 当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、当該費用は、原則として通勤手当として「報酬等」に含まれる。
 なお、在宅勤務・テレワークの導入に伴い、支給されていた通勤手当が支払われなくなる、支給方法が月額から日額単位に変更される等の固定的賃金に関する変動があった場合には、随時改定の対象となる。

問2 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合、当該手当は「報酬等」に含まれるのか。
(答)在宅勤務手当の取扱いについては、当該手当の内容が事業所毎に異なることから、その支給要件や、支給実態などを踏まえて個別に判断する必要がある。基本的な考え方は以下の通り。
①在宅勤務手当が労働の対償として支払われる性質のもの(実費弁償に当たらないもの)である場合
 在宅勤務手当が、被保険者が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を事業主に返還する必要がないものであれば、「報酬等」に含まれる。
(例)事業主が被保険者に対して毎月5,000円を渡し切りで支給するもの

②在宅勤務手当が実費弁償に当たるようなものである場合
 在宅勤務手当が、テレワークを実施するに当たり、業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を事業主が被保険者に支払うようなものの場合、その手当が、業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、当該手当は実費弁償に当たるものとして、「報酬等」に含まれない。

問3 在宅勤務・テレワークの実施に際し、在宅勤務手当が支給される場合の随時改定の取扱いはどうなるのか。
(答)在宅勤務・テレワークの導入に伴い、新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支払われることとなった場合は、固定的賃金の変動に該当し、随時改定の対象となる。

 交通費の支給がなくなった月に新たに実費弁償に当たらない在宅勤務手当が支給される等、同時に複数の固定的賃金の増減要因が発生した場合、それらの影響によって固定的賃金の総額が増額するのか減額するのかを確認し、増額改定・減額改定のいずれの対象となるかを判断する。
 なお、新たに変動的な在宅勤務手当の創設と変動的な手当の廃止が同時に発生した場合等において、創設・廃止される手当額の増減と報酬額の増減の関連が明確に確認できない場合は、3か月の平均報酬月額が増額した場合・減額した場合のどちらも随時改定の対象となる。
 また、一つの手当において、実費弁償分であることが明確にされている部分とそれ以外の部分がある場合には、当該実費弁償分については「報酬等」に含める必要はなく、それ以外の部分は「報酬等」に含まれる。この場合、月々の実費弁償分の算定に伴い実費弁償以外の部分の金額に変動があったとしても、固定的賃金の変動に該当しないことから、随時改定の対象とはならない。

 なお、厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトにおいて、在宅勤務における交通費及び在宅勤務手当の健康保険制度及び厚生年金保険制度における取扱いにが公開されており、その内容は事務連絡でも示されています。

↓事務連絡「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210405T0110.pdf


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参考リンク
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
法令等データベースサービス「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210405T0110.pdf
(宮武貴美)