労災における休業補償の税務上の取扱い

 先日、ある顧問先様より労災発生時の休業補償の税務上の取り扱いに関するお問い合わせを頂きました。この取扱いは意外に知られていないと思いますので、ここで取り上げたいと思います。



[質問]
 先日、当社の営業所で労災が発生しました。足を骨折し、数日間入院をすることになり、1週間程度会社を欠勤することになるようです。そこで、お休みをする最初の3日間は会社が休業補償を行うことになりますが、この休業補償には所得税がかかりますか?


[回答]
 今回の休業補償は非課税となります。所得税法上、休業補償は特殊な給与の取扱いのひとつに挙げられており、休業補償以外にも、労働基準法第8章《災害補償》の規定により受ける療養の給付や費用、障害補償、打切補償等も非課税とされています。なお、労働基準法で定められている平均賃金の100分の60を超えて休業補償を行った場合であっても、その休業補償については課税されないことになっています。


[まとめ]
 この休業補償は労働保険で計算する場合にも賃金とは解されないとされています。実務において給与と一緒に振込みを行うことなどが考えられますが、その取り扱いには十分に注意が必要となります。


[参考条文]
労働基準法 第76条第1項(休業補償)
 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の休業補償を行わなければならない。


所得税法施行令 第20条(非課税とされる業務上の傷害に基づく給付等)
 法第九条第一項第三号 イ(非課税所得)に規定する政令で定める給付は、次に掲げる給付とする。
一  恩給法 の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第百五十五号)附則第二十二条第一項 (旧軍人等に対する増加恩給等の給付等)の規定による傷病年金
二  労働基準法第八章 (災害補償)の規定により受ける療養の給付若しくは費用、休業補償、障害補償、打切補償又は分割補償(障害補償に係る部分に限る。)
三  船員法第十章 (災害補償)の規定により受ける療養の給付若しくは費用、傷病手当、予後手当又は障害手当
四  条例の規定により地方公共団体から支払われる給付で法第九条第一項第三号 イに規定する増加恩給又は傷病賜金に準ずるもの



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参考リンク
国税庁「給与所得の源泉徴収事務」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/aramashi2007/mokuji/02/01.htm


(宮武貴美)


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