賞与と配分のロジック

賞与と配分のロジック そろそろ夏季賞与の評価の準備が始まる。本来賞与は短期的な成果の配分という位置づけであるが、日本においては生活給的な色が濃く、一説によれば6割が生活給相当分と云われている。しかし本稿では、どの程度を成果配分とするかは別として、賞与は成果配分に活用するものであると定義し、その配分の考え方について述べてみたい。


 一般的に賞与は基本給の何カ月分という計算をされることが多いが、この場合、基本給が高ければ賞与も連動して高くなる。基本給に実力が反映され、かつ短期的な成果もそれに連動するということであれば、基本給連動型でも問題ない。しかし多くの場合、基本給は、個別事情や永年の経緯などの澱が溜まった状態になっているため、生活給的な部分はまだしも、成果配分の基礎賃金として使うには少々難がある。となると成果配分色を明確に打ち出すには、その部分は別の計算方法を採ることが望ましい。このときによく行われるのが能力等級連動方式である。これは、賞与の都度、原資を勘案しながら能力等級毎に基準配分額を決め、評価によってそれを上下展開させる方法である。これに役職加算、職務加算などを付加して成果配分賞与とすることが多い。しかしこの方法も、能力等級に比例して基準配分額も単純に高くなるような設定をしてしまうと、基本給連動型と同類になってしまう。これを改良すると次のような仕組みになる。


 能力等級が高い者ほど難しい仕事が与えられているという前提が崩れているケースは多いが、この場合は「絶対的成果」と「能力等級」のマトリックスで指数を出す方法が考えられる。絶対的成果とは、能力等級や経歴、年齢に関係なく、純粋に成果(結果や貢献度)の高さだけを見る。図表(画像はクリックして拡大)によれば、能力等級の高い者(G3)で絶対的成果が低ければ(C)、指数は1となる。逆に能力等級が低い者(G1)でも絶対的成果が高ければ(A)、指数は5となる。これによれば成果配分賞与は大幅に逆転する。基本給は多少年功的運用にしつつも賞与はドラスチックな制度としたい場合はこの方法が適合する。



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(小山邦彦)


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