求められる裁判員制度導入に伴う特別休暇制度の検討
裁判員制度の導入まであと10ヶ月を切り、企業においては従業員が裁判員に選ばれた際の取り扱いについて、そろそろ議論を開始しなければならない時期になってきました。
裁判員になる確率は、平成19年のデータを基に試算すると約5,000人に1人と言われていますが、実際に従業員が裁判員に選ばれた場合には、それに必要な休みを取得することは「公民権の行使」として労働基準法第7条により保証されています。また裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の第71条も、労働者が裁判員として休暇を取得した場合でも、解雇や不利益な取り扱いをしてはならないと定めています。しかし実際に従業員が裁判員としての活動を行うため必要な休みを取得した日の給与の取り扱いについては規定がないことから、各事業所の判断に委ねられています。
この件に関し、連合は「2008年春季生活闘争方針」として掲げた要求項目の中で、労働者が裁判員として休暇を取得した場合に年休扱いにするよう求めており、7月2日時点の集計では1,071件の要求件数に対し、741件が回答・妥結に至っており、約7割の企業で有給での休暇付与が行われるという結果になっています。もちろんこれは労働組合として要求を出した企業の集計ですので、全企業ベースで考えれば非常に先進的な取り組みであると考えるのが適当ではないかと思われますが、いずれにしても来春に向け、労使でこの問題について議論し、自社の従業員が裁判員に選任された際の取扱いを規定化しておく必要があるでしょう。
[関連法規]
労働基準法 第7条(公民権行使の保障)
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第71条(不利益取扱いの禁止)
労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
関連blog記事
2008年4月16日「裁判員制度 平成21年5月21日にスタート」
https://roumu.com
/archives/51307054.html
2008年1月21日「政令により裁判員辞退の申立てをすることができる事由が明らかに」
https://roumu.com
/archives/51232135.html
2007年10月29日「裁判員制度の取扱いを既に決めている企業はわずか6.9%」
https://roumu.com
/archives/51143352.html
2007年08月31日「平成21年度スタートの裁判員制度に対応する就業規則等の見直し」
https://roumu.com
/archives/51056431.html
参考リンク
連合「労働時間短縮・労働協約闘争の取り組み(第6回改定状況集計/最終)」
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/2008/shuukei_jitan/2008_jitantorikumi06.pdf
(佐藤浩子)
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