求人募集で避けるべき年齢に関するキャッチコピー
昨年の10月1日より改正雇用対策法が施行されました。主な改正点は、労働者の募集および採用の際には、原則として年齢を不問にしなければならない、というものでした。この年齢制限の禁止は、公共職業安定所を利用する場合のみならず、民間の職業紹介事業者、求人広告などを通じて募集・採用する場合や事業主が直接募集・採用する場合を含め、広く適用されることになっています。
改正から1年弱が経過しますが、まだまだ年齢制限行っている求人広告は少なくなく、また、実質的に年齢制限を行っているように受け取れる求人広告も見かけます。このような背景に基づいてか、先日、厚生労働省より「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」が出されました。今日は、判断に迷いやすいQ&Aをいくつか紹介しておきましょう。
[Q1]「若手募集」「中高年歓迎の企業特集」などの特集を設定している求人メディアに広告を掲載することは可能ですか。もし、その特集に広告を掲載することがよいのであれば、その広告は例外事由(3号のイ)に該当している必要がありますか。
[A1]求人メディアに掲載される個々の求人広告は、年齢不問とするか、例外事由のいずれかに該当する必要がありますが、それを集めて求人情報誌としてどのように編集してプレゼンテーションするかについては、直接雇用対策法の規制の対象となるものではありません。ただし、プレゼンテーションと相まって広告自体が年齢制限しているとの誤解を与えるものは、法の趣旨に照らし適当ではないものと考えられます。
[Q2]応募資格を「年齢不問」とした上で、「学生歓迎」「35歳未満の方歓迎」等の併記をすることは認められますか。
[A2]「学生歓迎」は年齢制限に当たりませんが、「35歳未満の方歓迎」は、実質的に年齢制限を行っていることと同じであり、35歳以上の方の応募を妨げるおそれがあることから法の趣旨に照らし適当ではないものと考えます。
[Q3]広告内に「スタッフ全員が20代のフリーター」等という、その企業の現状を表すキャッチコピーやスタッフの写真等を表示することは認められますか。
[A3]「スタッフ全員が20代のフリーター」と表示することは年齢制限に当たりませんが、スタッフが20代でなければならないとの誤解を求職者に生じさせるおそれがないように努めていただく必要があります。
[Q4]年齢不問とした上で、「20代が主役の会社です」といった表現を記載することは問題ないでしょうか。
[A4]「20代が主役の会社です」という表現は、20代の社員が多いことを表現しているとも解されますが、会社が20代を他の年齢層に比べて優先して募集しているとの誤解を求職者に生じさせるおそれがないように努めていただく必要があります。
[Q5]「年齢不問。ただし、35歳未満の方歓迎。」という表現は可能でしょうか。
[A5]「35歳未満の方歓迎」とした場合、35歳未満の求職者を年齢を条件に優遇するものと解されるため、35歳以上の求職者の応募を妨げるおそれがあります。そのため、このような表現は法の趣旨に照らし適当ではありません。ただし、「60歳以上の方歓迎」とする場合については、その趣旨が例外事由3号のニに該当するため、適法なものと解されます。
[Q6]求人情報誌の求人に「エルダー歓迎 ※40歳以上歓迎マーク」や「シニア歓迎 ※60歳以上歓迎マーク」「50歳以上歓迎マーク」などをつけることはできないのでしょうか。
[A6]歓迎マークの意味するところは、他の年齢層に比べて歓迎・優遇するとの趣旨ですので、他の年齢層の求職者の応募を妨げるおそれがあり、このような表現は法の趣旨に照らし適当ではありません。ただし、「60歳以上歓迎マーク」については、その趣旨が例外事由3号のニに該当することから、適法なものと解されます。
[Q7]例外事由の「期間の定めのない労働契約」には、有期労働契約を更新し雇止めをする場合は含まれないのでしょうか。また、募集の際に年齢不問としていながら、雇止め年齢を60歳未満とするとの規定を就業規則に定めている場合、その規定は違法となるのでしょうか。
[A7]例外事由の「期間の定めのない労働契約」は、契約として期間を定めていないことが必要であり、有期労働契約を更新し続ける場合であっても、個々の契約は期間の定めのある労働契約であることから、例外事由の「期間の定めのない労働契約」には当たりません。また、募集の際に年齢不問としていながら、60歳で雇止めをするとの規定を就業規則に定めている場合には、就業規則それ自体が直ちに雇用対策法第10条違反となるものではありません。しかしながら、当該就業規則に基づいて60歳以上の者を採用しない場合には、採用において年齢制限を行うこととなることから、雇用対策法第10条違反となります。
特に自社のアピールポイントを前面に打ち出したいときに「○代が多く活躍しているの会社です」という表現を用いたいものですが、求職者に誤解を与えないような配慮も重要となっています。なお、その他、実務上の疑義を生じやすい事項についても厚生労働省のホームページに記載されていますので、併せてご確認ください。
関連blog記事
2007年9月22日「[改正雇用対策法]派遣先が講ずべき措置に関する指針の改正」
https://roumu.com
/archives/51069801.html
2007年9月19日「[改正雇用対策法 Part2]労働者の募集・採用において年齢制限が認められる例外」
https://roumu.com
/archives/51065662.html
2007年9月14日「[改正雇用対策法 Part1]労働者の募集・採用の年齢制限の禁止」
https://roumu.com
/archives/51065622.html
参考リンク
厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」
http://www.mhlw.go.jp/qa/koyou/kinshi/qa.html
厚生労働省「募集・採用に係る年齢制限の禁止の義務化(事業主向けリーフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other16/dl/index03.pdf
厚生労働省「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other16/index.html
(宮武貴美)
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