人事評価は何のために行うのか

 すべての企業において人事評価制度の悩みは多いが、この制度構築に先立ち、是非やっていただきたいことがある。それは、「人事評価は何のために行うのか」のディスカッションである。通常は人事制度改定プロジェクト等のメンバーでこの討議を行うが、経営者も含めてのこの認識合わせは重要な場となる。


 この「何のため」を追及すると、上は「世界平和」、下は「カネの決定」まで、様々なレベルの言葉が出るが、問いかけは「何のために=目的」であるので、手段ではない。公平とか客観とか納得というのはよく出る単語だが、これは手段に過ぎない。この単語が出た場合は、「では、公平、客観、納得という手段を通して何を実現しようとしているのか?」と問うて上位目的に目線を上げてもらう。ちなみに、公平、客観、納得が欠けると、モチベーションが下がる(衛生要因)。しかし逆にこれが充足すればモチベーションが上がるという期待はあまりできるものではない。となると、その目的は「モチベーションを下げる要因を排除し、せっかく別の要因で上げようとしているモチベーション=成長 の足を引っ張らないこと」となる。


 目的と手段は裏腹の関係だが、あまり上に上がり過ぎては観念的になり、といって下に下がり過ぎては手段中心となって理念を失ってしまう。我が社にちょうどよいレベルに収斂させて30文字程度で一言集約をするとよい。ここで揉まれて出てきた言葉は、表現のしかたは様々あるが、概ね、「人と企業の成長のため」や「社員の幸せのため=この会社にいてよかったなあと思ってもらうこと」にまとまってくる。そのとおり、人事評価制度も含め、人事制度は「社員の幸せの実現と成長を主眼とし、ひいては企業の成長に資する」という目的のために構築するものなのである。


 また、人事制度構築(人事評価や報酬制度を含めて)をしていると、しばしば「木を見て森を見ず」の状態に陥る。特に細かい評価基準の作成段階に入るとこの状態になるが、行き詰ったときには原点に帰って、「何のためにこの作業をやっているのか」を再認識することで道を見失わないで済むことがよくある。そのためにもこの目的の認識は欠かせない。



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(小山邦彦)


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