政府の新雇用対策に掲げられた雇用保険制度の改正方針

政府の新雇用対策に掲げられた雇用保険制度の改正方針 経済危機による雇用状況の悪化に対応するため、政府は先ほど、「新たな雇用対策」を発表しました(画像はクリックして拡大)。この提言には、非正規労働者をはじめとする労働者の雇用の維持、雇用を失った労働者に対する再就職支援、新卒者への内定取消問題への対応の各対策がまとめられており、その詳細については参考リンクにあるpdfファイルをご覧頂きたいと思いますが、ここでは再就職支援策の一環として掲げられている「雇用保険制度の機能強化」について取り上げることとしましょう。


 ここ数ヶ月の雇用問題ではもっぱら非正規労働者の危機的状況が強く叫ばれていますが、この提言においても「この状況を放置すると、雇用失業情勢は過去最悪の5.5%の水準を上回り、100 万人を超える失業者が新たに発生する恐れがある」としています。こうした状況を受けて、雇用保険制度については以下の対策が掲げられています。



1)非正規労働者に関する適用基準である「1年以上の雇用見込み」を「6か月以上」に緩和し、適用範囲を拡大する。
2)契約更新がされなかった
有期契約労働者の受給資格要件(現行1年)を6か月に緩和し、6か月以上1年未満で雇い止めされた労働者も給付の対象とするとともに、特例的に給付日数を解雇等の離職者並みに充実する。
3)年齢、地域を踏まえ、特に再就職が困難な場合についての給付日数を特例的に60日分延長する。
4) 安定した再就職へのインセンティブ強化のため、早期に再就職した場合に支給される
再就職手当等について特例的に給付率を引き上げるとともに、一部受給要件を撤廃する。
5)
育児休業給付の暫定措置(給付率50%と10%引き上げ)を継続するとともに、全額を休業期間中に支給
する。
6)失業給付受給中に職業訓練を受講する者に対する手当を引上げる。


 こうした対策を実現するためには一定の予算措置が必要な上に、首相支持率の低下による政界再編の動きが強まっている環境であることから、今回の雇用対策がすべて実現するとは言い切れませんが、雇用保険制度においても大きな影響が予想されることから、今後の議論を注意して見ていきたいところです。



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2008年7月4日「8月から適用される雇用保険の基本手当日額および高年齢雇用継続給付の支給限度額が発表」
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2008年4月25日「正社員への転換を支援する「中小企業雇用安定化奨励金」」
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参考リンク
首相官邸「新たな雇用対策について」
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2008/1209koyou.pdf


(大津章敬)


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