[ワンポイント講座]一時帰休が長引いた際の平均賃金の取扱い
景気の悪化により、長期にわたって一時帰休を実施しているようなケースがみられます。会社都合により休業させた場合には、休業手当として平均賃金の6割以上を支払う必要がありますが、一時帰休が長引いた場合、平均賃金の額が徐々に小さくなるという問題が発生します。そこで、今回のワンポイント講座では、一時帰休が長引いた場合の平均賃金の計算方法について取り上げてみましょう。
会社の責に帰すべき事情による休業を行う場合は、労働基準法第26条の定めに基づき、平均賃金の60%以上の手当(休業手当)を支払うことが必要とされています。平均賃金の取り扱いについては労働基準法第12条に定めがあり、基本的には過去3ヵ月間の賃金総額を過去3ヵ月の総日数で割って算出することになっています。ただし、賃金の支払形態については月給者もいれば日給や時給者もいることから、労働基準法第12条第1項の但書において、以下の の最低保障額を下回ってはならないとされています。
賃金が日給・時間給によって算定され、または出来高払制その他の請負給で定められた場合
賃金の総額÷その期間中に労働した日数×100分の60
賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められている場合
その部分の賃金の総額÷その期間の総日数(暦日数)+上記の金額
そのため、時給者に休業手当を支払う場合は、過去3ヵ月間の賃金総額を過去3ヵ月の総日数で割った額との賃金の総額÷その期間中に労働した日数×100分の60とを比べて、どちらか高い方の金額を支払う必要があります。
それでは、月給者には最低保障の適用はないのでしょうか?一時帰休を行っている場合の平均賃金の計算方法については、労働基準法第12条第3項および第4項で休業した期間および休業手当を除くことになっているため、休業が増えるほど、分母も分子も数字が減ってしまいます。そのため、例えば月給300,000円(欠勤につき1日あたり15,000円減額する場合)の者が4月に初めて休業した場合の平均賃金は、10,000円(300,000円×3ヵ月/31+28+31日)となりますが、4月から6月にかけてトータルで16日間の休業があった場合では8,800円(300,000円×3ヵ月-15,000円×16日/30+31+30-16日)となり、平均賃金の額が以前よりも小さくなっています。
この月給者については労働基準法に最低保障の適用の定めがないことから、今回のケースでは、8,800円×60%=5,280円を支払うことになります。
その一方で、私傷病等により欠勤日数が多い場合については、平均賃金が著しく低くなるおそれがあることから救済として、労働基準法第12条第8項(労働に関する主務大臣の定めるところによる)によるべきとされています。具体的な取扱いとしては、通達(昭和30年5月24日基収第1619号)で以下の計算式が示されています。
欠勤しなかった場合に受けるべき賃金総額÷所定労働日数×60/100
そのため、欠勤が長引いている場合は、平均賃金の額が上記の計算式で計算された金額を上回っているのか確認することが求められます。
※2012年7月27日 16時に内容を訂正いたしました。
[関連法規]
労働基準法 第12条
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
1.賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
2.賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
2 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。3 前2項に規定する期間中に、次の各号の一に該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前2項の期間及び賃金の総額から控除する。
1.業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
2.産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間
3.使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間
4.育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第2条第1号に規定する育児休業又は同条第2号に規定する介護休業(同法第61条第3項(同条第6項及び第7項において準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第39条第7項において同じ。)をした期間
5.試みの使用期間
4 第1項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。
5 賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第1項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
6 雇入後3箇月に満たない者については、第1項の期間は、雇入後の期間とする。
7 日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。
8 第1項乃至第6項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。
労働基準法 第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
関連blog記事
2009年3月25日「[ワンポイント講座]昇給が遅れた際の平均賃金の計算方法」
https://roumu.com
/archives/51525060.html
2009年1月21日「 [ワンポイント講座]採用内定者を自宅待機させた場合の休業手当はどのように計算すればよいのか」
https://roumu.com
/archives/51488404.html
2008年12月31日「[ワンポイント講座]1日のうち半日を休業した場合の休業手当はどのように計算するのか」
https://roumu.com
/archives/51476230.html
参考リンク
茨城労働局「会社都合による休業中は休業手当の支払が必要」
http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/soumu/qa/chingin/chingin02.html
(福間みゆき)
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