財政状況の悪化で引上げが検討されている協会けんぽの保険料率

財政状況の悪化で引上げが検討されている協会けんぽの保険料率 健康保険制度の財政状況の悪化は、これまで各メディアで何度となく取り上げられていますが、その中でも特に中小企業の従業員とその家族が加入する協会けんぽの財政状況の悪化とそれに伴う保険料率の引上げには大きな関心が集まっています。これに関し、協会けんぽからも厳しい財政状況に関する情報が公開されていますので、今日は協会けんぽの厳しい財政状況について取り上げてみましょう。


 協会けんぽ(旧政府管掌健康保険)では、これまで、従業員本人が医療機関で治療を受けたとき等の負担割合を2割から3割に引上げたり、医療機関に対する診療報酬の引き下げを行うなどして、財政状況の改善を目指してきました。この背景には、少子高齢化が進んでいることがあり、医療費は増大をしていくにも関わらず、保険料収入がほとんど伸びず、結果として協会けんぽの支出の伸びが収入の伸びを上回る状況が続いていたことにあります。平成19年以降は、準備金(積立金)を取り崩しながら運営する状況が続いていますが、依然として改善される見込みはなく、更なる悪化が問題となっています。


 更に昨年秋以降の急激な経済危機により、保険料収入の基礎となる標準報酬月額が予想を超えて大きく減少し、追い討ちをかけるように新型インフルエンザ等により医療費支出が増え、財政が急速に悪化しています(画像はクリックして拡大)。そこで現在、協会けんぽでは来年度の保険料率の引上げが検討されており、悪化している財政状況を踏まえると、平成15年度以降据え置かれている保険料率8.2%(全国平均)を9.9~11.6%へ引上げざるを得ない見通しが示されています。この引上げは、標準報酬月額28万円の被保険者にとって月額2,400円~4,750円程度の負担増に該当し、当然、同額を事業主も負担することとなります。


 現在は、国庫補助の増額を国に求めている状況のようですが、仮に現在より大幅な増額が行われたとしても、財政状況から考えると保険料率の引上げは必至でしょう。企業のコストアップ要因でもあるため、今後、協会けんぽの運営委員会での検討に注目をしていきたいと思います。



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2009年7月31日「9月から適用となる協会けんぽの都道府県保険料額表のダウンロードできます」
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2007年10月10日「社会保険庁廃止に伴う都道府県別健康保険料率設定の影響」
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参考リンク
協会けんぽ東京支部「協会けんぽの厳しい財政状況についてのお知らせ」
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/29819/20091120-164150.pdf


(宮武貴美)

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