[ワンポイント講座]育児休業中に介護休業の事由にも該当することとなった場合の取扱い

 2010年2月10日のブログ記事「[ワンポイント講座]傷病手当金と介護休業給付金は併給できるのか」では、傷病手当金の受給中に介護休業の事由が発生した場合の取扱いについて取り上げましたが、今回のワンポイント講座ではこれに引き続き、育児休業中に介護休業の事由にも該当した場合の対応について取り上げてみましょう。


 この論点に入るに当って、まず確認しておかなければならないのは、育児休業と介護休業は同時に取得することができるのかという点です。この点について育児介護休業法では、育児休業の終了事由の一つに「介護休業期間が始まったこと」(育児介護休業法 第9条第2項第3号)が挙げられているため、そもそも育児休業期間と介護休業期間が並存することはできないということになります。育児休業期間中に、介護休業を開始するということであれば、育児休業の残存期間があったとしても、それに伴って育児休業期間は終了となります。また、その逆も然りであり、介護休業期間中に育児休業が始まった場合、介護休業は終了します。


 このように双方の休業が並存ができないのであれば、育児休業期間中に介護休業の事由にも該当した場合には、どちらの休業を取得することが労働者にとってメリットが大きいのでしょうか。この両者の制度を比べてみましょう。育児休業期間中は、社会保険料の納付が免除され、育児休業休業給付金がその養育する子が1歳に達するまでの間、休業開始時賃金日額の30%相当額支給されます。さらに、平成22年3月31日までに育児休業基本給付金の支給対象となる育児休業を開始した場合は、暫定的に育児休業者職場復帰給付金の給付率が20%相当額となりますので、全体の給付率は50%となります。


 これに対して介護休業期間は、社会保険料の免除はなく、期間としては最長でも93日間しかありません。介護休業給付は休業開始時賃金日額の40%であり、現時点では、育児休業の給付率よりも低いものとなっています。


 したがって制度的に見ると、育児休業期間中に介護保険の取得事由に該当したとしても、介護休業に切り替えるのではなく、そのまま育児休業の取得を続け、育児休業を終えた時点で未だ介護休業を取らざるを得ない事由が解消していないということであれば、介護休業を取得するという形が労働者にとっては、メリットが高いといえるでしょう。


[関連法規]
育児介護休業法 第9条第2項
 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、育児休業期間は、前項の規定にかかわらず、当該事情が生じた日(第三号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一 育児休業終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の労働者が育児休業申出に係る子を養育しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。
二 育児休業終了予定日とされた日の前日までに、育児休業申出に係る子が一歳(第五条第三項の規定による申出により育児休業をしている場合にあっては、一歳六か月)に達したこと。
三 育児休業終了予定日とされた日までに、育児休業申出をした労働者について、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する期間、第十五条第一項に規定する介護休業期間又は新たな育児休業期間が始まったこと。


育児介護休業法 第15条第3項
 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、介護休業期間は、第一項の規定にかかわらず、当該事情が生じた日(第二号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一 介護休業終了予定日とされた日の前日までに、対象家族の死亡その他の労働者が介護休業申出に係る対象家族を介護しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。
二 介護休業終了予定日とされた日までに、介護休業申出をした労働者について、労働基準法第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する期間、育児休業期間又は新たな介護休業期間が始まったこと。



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2010年2月10日「[ワンポイント講座]傷病手当金と介護休業給付金は併給できるのか」
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2010年1月30日「[ワンポイント講座] 転勤を拒否した社員への懲戒処分」
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(佐藤和之)


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